ペット産業の動向~市場規模、競争環境、主要プレイヤー
サマリー
- 2019年度のペット関連ビジネス市場規模(末端金額ベース)は、前年度比101.8%の1兆5,700億円と推定されている(出典:矢野経済研究所「ペットビジネスマーケティング総覧2020年版」)
- ペットのほとんどを占める、犬と猫の飼育頭数の合計は減少傾向にあるものの、市場規模は全体として微増傾向にある
- 背景には、ペットの家族化に伴う、高単価商材の伸長、ペット保険等新サービスが市場に受け入れられ始めていることが挙げられる
- また人間と同じく、「少子高齢化」現象が起きており、新生児の数が減りつつも医療の発展に伴い、平均寿命が延びている
- こうした変化に着目して、各社が商品・サービス開発を進めている
- 市場規模に現れないものの、SNSでは動物の写真や動画が数多く取り上げられており、潜在顧客との接点を持つきっかけとしても注目されている(事例を読む)
業界概要
ペット産業の主たるターゲットである犬・猫は全国に約1,850万頭いると言われている(一般社団法人ペットフード協会「2019年 全国犬猫飼育実態調査」より)。この数は、15歳未満の子供よりも多く、65歳以上の高齢者よりは少ない、といった規模感で、絶対数は極めて多い。
ペット産業は大きく4つの市場に分かれる。
1)ペットフード末端市場:前年度比104.0%の3,850億円(2019年度)と推定されている(キャットフード市場が拡大)。
2)ペット用品末端市場:前年度比104.9%の1,224億円(2019年度)と推定されている(ペットシート、猫砂、シャンプーなどと品目は多様)。
3)生体+サービス分野:ペット業界市場規模のうち、約50%を占めている。
4)ペット医療市場:前年度比102.7%の2,623億円(2019年)と推測されている。ペットの高齢化やペット治療の高度化による医療費の増大、ペット保険加入率の増加等を考慮すると、今後もペット医療の市場拡大が見込まれる。
ペットフードとペット用品の流通経路は、メーカーから卸業者を介してペットショップなどの小売店へ納入されることに加え、近年ではホームセンターやスーパーマーケットなどへの納入も増加し、小売チャネルは多様化している。さらに、インターネットによる直接販売など、卸業者を通さない流通も増加している。ECサイトとしては、楽天やAmazonのような大手ECモール・PFの他、ペットビジョン(黒澤社長へのインタビューを読む)のような専門サイトも登場しており、本間アニマルメディカルサプライでは動物関連の医薬品も販売していた。また、「動物医療の高度化」によってペット保険に加入する人は年々増加しており、ペット保険業界の市場規模は毎年2桁の成長を遂げており、2015年から2019年度までの平均成長率は16.7%となっている。(出典:矢野経済研究所「ペットビジネスマーケティング総覧2020年版」)
また、フードや用品等の必需品に加え、旅行や外出等で愛犬の世話ができない飼い主と預かり手をマッチングするサービス「DogHuggy」を始めとして嗜好品の部類に属するサービスも出てきている。
飼い主を見た場合、50代以降の世代で犬、猫の飼育率が高くなっており、今後高齢化が進行していくなかで、ペットの終生飼養をサポートするサービスへの需要が高まることが見込まれる(アイペット損害保険㈱「50代以降の飼育者への意識調査」より)。
SMBC「ペット業界」
https://www.smbc-consulting.co.jp/member/mc/bankupload/industry/pdf/pet7.pdf
市場環境
業界にとって大きなトピックはなんと言っても飼育頭数の減少である。ペットフード協会の調査によれば、犬の飼育頭数は減少傾向にある一方で、猫の飼育頭数は横ばい、微増の傾向にある。なお、2017年の調査では、調査を始めて初めて犬の飼育頭数を猫が上回った。
出所:一般社団法人ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査」をもとにアイペット損害保険㈱にて作成
近年小型ペットの人気が上昇していることや、室内飼育が増加していることなどの影響で、ペットフードの出荷総量と大型犬向けの需要は減りつつある。一方、小型志向の影響を受けない猫は、長期的に飼育頭数が安定しており、キャットフードの需要も安定、足元では微増となっている。また近年では、犬種・猫種別にフードが発売されており、ユーザーに一定の支持を得ていることから、家族化の進行に伴う個別化・多様化が進んでいる。
近年のペット飼育状況は、「室内飼育化」「小型犬化」「高齢化」「肥満化」がキーワードとなっている。ペットの高齢化が進むにつれて、飼い主のペットに対する健康管理意識が高まりつつある。そのため、低価格帯商品が支持される一方で、味や栄養にこだわったフードや年齢に合わせたフードなど、単価の高い新製品が注目されるようになった。ペット産業で最近よく聞くのが療法食という高齢ペット向けの専用商材である。
また、ペットの小型化と室内飼育率の上昇は、トイレシートなどの主に室内で使用するケア用品の需要拡大に寄与している。ペットケア用品市場でも、匂いの残らない猫砂やペットシャンプーなどの高付加価値化が進行し、販売額が拡大している。もともとペット専業ではない企業が、ペット業界に商機を見出して参入するケースも見受けられる。
■ヒノキの間伐材を100%使用した猫砂で限界集落の再生に取り組んでいるケース
■破れない鍵付き網戸を販売する企業がペット飼育者のニーズを捉えてプロモーションを変更したケース
競争環境
日本のペットフード市場は、市場シェア上位を外資系メーカーが占めている点が特徴となっている。
市場を牽引するペットフード主体事業者では国内系と外資系が混在している。マースジャパンはP&Gのドッグフードブランド(アイムス、ユーカヌバ等)を買収し、ロイヤルカナン等も傘下におさめ、圧倒的なトップの座を誇っている。国内企業ではユニ・チャームが大手である。その他、日本ヒルズ・コルゲート、ネスレピュリナペットケア、いなばペットフード等、上位企業によってシェアの約6割を占める上位集中の構造である。
ペットケア用品主体事業者では、アイリスオーヤマ、ライオン商事、ヤマヒサ、ドギーマンハヤシなどが有力で、日用品メーカーの花王も有力プレイヤーの1つである。
ペット関連卸事業者では、最大手のジャペルに次いで、エコートレーディングが主要企業となっている。
ペット関連の新規事業
ペット関連の事業領域では、裾野の広さから近年多くのサービス等が現れている。ペットフードやペット用品といった必需品に加えて、嗜好品の部類に属するようなサービスが出てきているのが特徴だ。
各市場のレポート・データ
既成市場 | ペットフード | 市場動向/主要プレイヤー |
ペット用品 | 市場動向/主要プレイヤー | |
ペット卸売 | 市場動向/主要プレイヤー | |
新興市場 | ペット住宅 | 市場動向/ペット可賃貸 |
ペット保険 | 市場動向/各社IR情報 | |
ペットメディア | マーケティング/ウェブメディア/ペット関連雑誌 | |
その他サービス | 老犬ホーム/ペット葬儀/新興サービスまとめ |
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