ペットフード産業の市場動向

2018年2月1日

 

サマリー

  • 犬猫の飼育頭数の減少に伴い、ペットフードの出荷量は減少している
    -飼育頭数:‘08年犬1,090万頭、猫1,310万頭・‘17年犬892万頭、猫952.6万頭
    -ペットフード出荷量(犬猫):‘08年672,169トン・‘15年568,610トン
  • しかしながら、ペットフードの市場規模は上昇傾向にある
    -高単価のプレミアムペットフードが消費者に受け入れられている
    -背景には、ペットの家族化(コンパニオンアニマル)、高齢化により栄養価の高い フードが求められていること、健康意識の高まりなどが存在する
  • 市場は外資メーカーを中心とした大企業により、シェアの過半が占められているもの、前述の健康志向により、国産フードも成長している
    -マースジャパンリミテッド、ユニ・チャーム、ネスレ日本が上位を占めている
  • また犬と比較して猫は飼育頭数が減っておらず、既に猫の数の方が多いとも言われているため、昔と比較して猫向けの商品も充実してきた
    -農薬や化学肥料などを使わない畑で作られたオーガニック野菜や牧草で育てられた牛を原料とする超健康志向のフード等が登場

詳細:「世帯環境」「経済環境」が飼育頭数にも影響

 1980年代から1990年代に第一次のペットブームが起きた。その背景としては、犬や猫は防犯やネズミ駆除などの人間の生活に利用する動物といった考えが無くなり、動物に愛着が湧くことで飼育を楽しむための存在として捉えられるようになったためである。しかし、近年は少子化に伴い、犬、猫などのペットは飼い主にとって家族同然の存在、「コンパニオンアニマル」となった。家族の一員として捉える考え方が浸透するにつれて、飼い主はペットにお金や手間をかけるようになり、関連ビジネスは広がりを見せている。特に猫に関しては「ネコノミクス」や「猫ブーム」と呼ばれるほど話題となっている。実際に、ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査」によると、‘17年時では猫は国内飼育数937万頭と微減し、犬が892万頭と減少している。この原因の一つとして、ペットにかかるコスト面を考えてのこととなっている(ペットの年間支出に関する調査はこちらから)。また、共働き世帯が増える一方で住宅が狭いことから犬が走り回る場所がない、吠える声で近所から苦情を受けてしまうことがある他、単身世帯者も増加傾向にあり、散歩が必要となる犬は難しく、日中家を空けてしまうことで面倒を見る人がいないなどのことから、新規で飼い始める際、犬よりも猫の方が好まれる傾向にある。

出所:一般社団法人ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査」

ペット産業の三大潮流:「家族化」「高齢化」「健康志向」に対応し、市場を拡大

ペットフード産業は飛躍的な発展を遂げており、年々各家庭のフードにかけるお金が上昇している。その理由はいくつか存在する。その一つとして、ペットの高齢化が挙げられる。1980年代の犬猫の平均寿命は3~4歳、1990年代では10歳前後と除々に寿命が延びる中(「日本獣医師会雑誌」第64巻、p.22-26 2012年)、ペットフード協会の「2017年 全国犬猫飼育実態調査結果」によると、平均寿命は犬が14.2歳、猫が15.3歳となった。平均寿命が延びるにつれて、ペットフード会社は高齢ペットに向けて、食べやすいジェル状のフードや不足しがちな栄養分を追加したりする製品を消費者のニーズに応えて拡充してきた。また、ペットの健康や美容に対する飼い主の意識自体の高まりが、フードの種類に影響を与えていることが伺える。2015年度のペットフード市場規模は、小売金額ベースで前年度比102.8%の4,735億円であり、(出典:矢野経済研究所「ペットビジネスマーケティング総覧2017年版」)引き続きキャットフードが牽引役となり市場が拡大しているが、ペットの食事に対する安心・安全と健康管理への関心の高まりにより、ドッグ・キャットフードともにプレミアムペットフードを中心に旺盛な需要に支えられている状態である。また飼い主の国産品志向とともに、円安進行などの影響でメーカーの国内生産への動きも見られている。

出所:一般社団法人ペットフード協会「ペットフード流通量調査結果1993年~2016年」

出所:一般社団法人ペットフード協会「ペットフード流通量調査結果1993年~2016年」

ペットフード産業の現状課題と今後の動向

2015年度のペット関連総市場(末端金額ベース)は、前年度比101.5%の1兆4,720億円と推定されており、ほぼ横ばいの状況となっている(出典:矢野経済研究所「ペットビジネスマーケティング総覧2017年版」)。現状の課題としては、ペット産業のみとしての有名企業が少なく、多くが起業したばかりの会社や発展途上の会社であることが挙げられる。また、メーカーの数が多すぎて業界リーダーが見えない、大手の問屋はあるとしても、売上げ規模で均衡しておりどこもリーダーと特定できない等、他業界に比べて成熟しているとは言えない点も多く見受けられる。同様なことがペットフード市場単体についても言え、フード自体の需要が伸びていても企業側として飛躍的に発展を特定して遂げている企業自体はまだ少ないのである。マースジャパンリミテッドやユニ・チャーム等、多くのビジネスを手掛けている中で、同時にペット産業も扱っているといった企業が現在伸びている傾向がある。

参考文献:
須田沖夫 (2011). 「家庭動物 (犬猫) の高齢化対策: 飼育者にその死をどう受け入れさせるか」. 日本獣医師会雑誌= Journal of the Japan Veterinary Medical Association, 64(1), 22-26.

【参考ページ】

ペットフードメーカーの上位企業10社
フードーメーカー各社の特徴や売上を情報ソース(リンク形式)と共にまとめています。
プレミアムペットフード市場の動向と関連注目企業
ペットフード産業の中でも成長を続けているプレミアムペットフード市場について、その背景にある要因や関連注目企業、今後の動向に対する考察をしています。

 

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