ペット保険業界の動向
サマリー
- ペット保険業界の市場規模は全体で約824億円(2019年ペット保険市場規模見込み)
- 市場規模は毎年20%前後の成長率で伸びている
- 業界が成長している背景として、「ペット保険の認知向上」「ペットの家族化」等が挙げられる
- また、1980年代から1990年代にかけての第一次ペットブームにペットを飼育し始めた人が2匹目を迎える時期になり、以前飼っていたペットに多額の医療費がかかったことを懸念して加入検討する人が増加していると考えられる
- 国内に犬猫が約1,850万頭以上飼育されていると推測されており、そのうち保険に加入している割合は約10%と推計される
- ペット保険会社は少額短期保険会社及び損害保険会社を合わせて国内に15社ある(損害保険会社5社、少額短期保険会社11社)
業界概要
ペット保険とは、大切なペットが病気やケガで診療や手術を受けた場合に、かかった費用を限度額や一定割合の範囲内で補償する保険。100年以上前に世界初となるペット保険がスウェーデンで作られ、日本では1995年に販売が開始された(参考:ペット保険の歴史)。現在ペット保険を取り扱っている会社は国内に15社あると言われている。
ペット保険会社は大きく分けて2つの業態に分かれる。
1)少額短期保険会社
■財務局による登録制
■最低資本金が1,000万円
■生損保兼業化
■取扱商品に制限がある。
【少額短期保険会社に分類されるペット保険会社】(2018年2月時点)
■イオン少額短期保険株式会社
■イーペット少額短期保険株式会社
■SBIいきいき少額短期保険株式会社
■株式会社FPC
■SBIプリズム少額短期保険株式会社
■日本ペットプラス少額短期保険株式会社(旧ガーデン少額短期保険株式会社)
■ペッツファースト少額短期保険株式会社
■ペッツベスト少額短期保険株式会社
■ペットメディカルサポート株式会社
■楽天少額短期保険株式会社
2)損害保険会社
■金融庁による免許制
■最低資本金が10億円
■生損保兼業不可
■取扱商品に制限がない
■損害保険契約者保護機構に加入しており、万が一保険会社が破綻した場合に、
契約者等を保護するセーフティーネットがある。
【損害保険会社に分類されるペット保険会社】(2018年2月時点)
■アイペット損害保険株式会社
■アニコム損害保険株式会社
■アクサ損害保険株式会社
■au損害保険株式会社
■ペット&ファミリー損害保険株式会社
<上記各社のIR情報はこちら>
ペット保険企業のIR・業績開示ページへのリンク集
国内市場規模
国内に犬猫が1,850万頭以上いると言われているが(出所:一般社団法人ペットフード協会「2019年 全国犬猫飼育実態調査」)、ペット保険に加入しているペットはそのうちの約10%と推計される。
昨今の「ペット保険の認知向上」や「ペットの家族化」、さらに「動物医療の高度化」により、ペット保険に加入する人は年々増加しており、ペットの飼育頭数が横ばいの中であるにも関わらず、2015年度から2019年度までのペット保険の正味収入保険料の年平均成長率は16.7%と順調に推移している。
参考:㈱矢野経済研究所「2020年版ペットビジネスマーケティング総覧」
競争環境
市場は拡大しているが、全体の保有契約件数をベースとしたシェアはアニコム損害保険㈱とアイペット損害保険㈱で市場の約7割を占めており、2社寡占状態である。
参考:㈱富士経済「2020年ペット関連市場マーケティング総覧」
業界の課題
ペット保険の必要性は80%を超えると言われているにも関わらず、実際に保険加入している人は約10%に留まっている。原因として以下のことが考えられる。
・自分事化の欠如
日本高度医療センター(※)によると、「ペット保険は必要だと思う」と回答した方は全体の80%以上を占める。しかし、「加入検討したい・検討中」という方は全体の50%強、さらに、ペット保険契約件数は約4%に留まる(2013年時点)。この結果から、ペット保険の必要性と加入までに大きな乖離があることが分かる。一つの要因として、「自分事化の欠如」が挙げられる。ペット保険に加入する方の一つの特徴として、「以前飼っていたペットが病気になり、その治療費が高額であった」や「知人のペットが怪我をして、多額の手術費用がかかったと聞いた」等、自分または自分の身近な人に何か起こった際に加入意向が高まるということがある。
今後ペット保険会社は、ペット保険の必要性を説くだけでなく、いかに自分事化させることができるかが重要なポイントと言えるだろう。
※成長可能性に関する説明資料
株式会社日本動物高度医療センター