プレミアムペットフード市場の動向と関連注目企業
プレミアムペットフード市場の動向
ペットフード市場は、ペット産業の中でも古く成熟した市場だ。国内の犬の飼育頭数は減少傾向にあり、土地の狭さや共用住宅世帯の増加等の要因により今後も小型犬が人気だと考えると、ドッグフードの消費量の伸びはなかなか見込まれないだろう。これに対して、ペットフード市場の中でも伸びる余地があるのが「プレミアムペットフード」だ。プレミアムペットフードとは、従来の安価なペットフードと違い、栄養価や安全性等に配慮した高付加価値・高価格帯のペットフードだ。
ペット産業全体のトレンドである「家族化」「高齢化」「健康志向」という3つのトレンドの影響を受け、近年プレミアムペットフードの市場規模が拡大している。人の食事のようにペットにも質の良い「食事」をさせたいと考える飼育者が増えている。子どもに食事を与える際に食材の「安全性」に気を遣うように、ペットに対しても安全で信用のあるペットフードを与えたいというニーズが高まっているようだ。また、こうした飼育の質の向上や動物医療技術の発達が要因となってペットの高齢化が進んでおり、必然的に高齢犬・高齢猫用のペットフードのニーズも高まっている。加えて、ペットの人間化が進むに連れてペットにも「生活習慣病」のような症例が増えており、それらに対応した健康系のペットフードも需要が高まりそうだ。ここ最近では、従来のプレミアムペットフードを上回るクオリティの「スーパープレミアムペットフード」も現れ始めており、注目すべき点の一つだろう。
供給サイドのペットフードメーカーとしても、プレミアムフードの販売量を上げたいところだろう。上記のような付加価値が付いたプレミアムペットフードはその分価格が高く、今後ペットフードの消費量の増加が見込めない中で、売上金額を伸ばす重要なカテゴリだ。こうした需給両サイドのニーズのマッチにより、プレミアムペットフードの市場規模は今後も拡大すると予想される。
プレミアムペットフード関連企業
プレミアムペットフード市場におけるプレイヤーは、ペットフードメーカーと商品を販売する小売業者に分けることができる。
まずペットフードメーカーに関して、プレミアムペットフード市場における上位企業は、ペットフード市場全体における上位企業の顔ぶれとほとんど変わらないものの、順位は異なる。ペットフード全体で見たときにトップシェアを誇るのはマース・ジャパンだったが、プレミアムペットフードに限定すると、日本ヒルズコルゲートが最もシェアを獲得しているようだ(代表取締役社長インタビュー)。日本ヒルズコルゲートは米国のペットフードメーカーで、代表ブランド”サイエンス・ダイエット”を初めとして、プレミアムペットフードに特化して商品を製造・販売している。機能性の高いペットフードに絞って扱っているため、特に獣医師チャネルに注力しているようだ。
この他、スーパープレミアムペットフードを製造・販売するメーカーも規模を拡大している。その一例が「husse(フッセ)」だ。husseはスウェーデンに本社を置くペットフードメーカーで、1987年に創設された歴史ある企業だ。創設時から高品質なペットフードを提供しており、FEDIAF(欧州ペットフード工業連合)やIFS(国際食品規格)といった厳しい外部の基準をクリアしている。また、husseに関して特に注目すべきは、人間が口にしても何の問題も無いほどグレードの高い最高品質の原材料によって作られている(ヒューマングレード)点だ。さらに、地域毎に専任のアドバイザーがいるため、husseの商品を家まで直接届けることや、直接ペットの様子を見ることで最適なペットフードを提案することが可能なのだ。栄養価や品質にこだわっているプレミアムペットフードメーカーは多く見られるが、husseほど厳しい基準とこだわりを持って製造・販売している企業は少ないだろう。
小売業者に関して、プレミアムペットフードに特化して販売を行っている企業が存在する。株式会社カラーズが運営する「GREEN DOG」は、ペットフードを中心としたペット関連商品限定のECサイトだ。「ホリスティックケア(飼い主とペットが心身ともに健康でいられるためのケア)」を合言葉としており、サイト内で販売している商品も素材や安全基準の観点からも厳選されたものばかりだ。特に安全基準は徹底しており、危険な化学物質不使用や第三者機関による検査に加え、原材料や賞味期限等を把握できる商品のみを扱っている。
また、GREEN DOGは、ショッピングやグルーミング、ペットホテル機能等を持つ店舗を全国に4件(2016年10月末現在)出店している。リアルでの接点を持つことで、それぞれの犬にあったペットフードやケアを提供することが目的だろう。
まとめ
以上の通り、ペットフード市場全体の中でもプレミアムペットフードの存在感は年々増しており、プレミアムペットフード単体にフォーカスした業者も現れている。いくつか挙げた企業例に共通する流れとして、ペットフードに高付加価値を求める先には、
①栄養価・食べやすさといった観点での高機能商品の開発・販売
②各ペットに合ったプレミアムペットフードを提案するサービス
がありそうだ。そして②に関しては、もはやペットフードメーカー・小売店だけの問題ではなく、あらゆるペット関連業界の繋がりが重要なるのかもしれない。
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