今話題、ペット可サービス付き高齢者向け住宅とは?
高齢化が進む中、サービス付き高齢者向け住宅や老人ホームの数が増加している。その中には「ペット可」の施設もあることをご存じだろうか。ペットと入居できるサービス付き高齢者向け住宅(以下、「サ高住」)及び老人ホームの特徴を紹介する。
60代以上の8割近くはペットの最期を見届けられるか不安に感じている
アイペット損害保険(株)の調査によると、現在飼育しているペットが亡くなった場合、新しいペットを迎え入れるかどうか聞いたところ、「迎え入れる」という回答は21.7%となった。一方、「迎え入れたいが、迎え入れないだろう」という回答が26.6%あり、回答者の4人に1人はペットとの生活を望みながらも、実現に課題を感じているようだ。
前問で、ペットを「迎え入れたいが、迎え入れないだろう」または「迎え入れたくない」を選択した回答者にその理由を聞いたところ、「自分の健康を考慮して、最期まで世話できるか分からない」という終生飼養への不安が69%と最も多くなった。同回答について、50代と60代以上で比較したところ、50代は51.4%である一方、60代以上の回答者は78.2%と、終生飼養への不安は60代以上に顕著に見られる結果となった。
このような「飼いたくても飼えない」というニーズや、自身が老人ホーム等に入居したいがペットを預ける先が見つからないといったニーズに応えるのが、ペット可のサ高住や老人ホームである。
ペット可サ高住・老人ホームの特徴
ペット可のサ高住や老人ホームでは、施設の階によってペットとの入居を可とするなどしている。入居者が連れてきたペットの他、施設のペットとして保護団体等からペットを迎え入れてスタッフが飼育しているケースも多い。
ペット可のサ高住や老人ホームの多くは、自身のペットを連れていなくても入居が可能である。ペット可特別養護老人ホームさくらの里山科の施設長若山氏によれば、ペット連れでない入居者は、以前はペットを飼っていたことがありペットと暮らしたいが、自分の年齢を考えると新しくペットを迎え入れることを諦めたという入居者が多いという(参考:同氏インタビュー記事「ペット可特養「さくらの里山科」による、諦めない介護」)
こうした入居者は、積極的に施設内の犬や猫たちと触れ合っている。動物との触れ合いによる心身への効果は多いとされるが、同氏によれば中には認知症の症状が改善した入居者もいるという。犬や猫の名前を覚えることで記憶力が刺激されたり、犬や猫を撫でることで自然と手の関節のリハビリになるなどの効果がある場合もある。
ペットのお世話については、サ高住の場合は入居者自身が基本的に行い、有料で通院などの代行を請け負うサービスを設けているケースがある。老人ホームの場合は、ペットの世話は施設が基本的に行うことが多い(フード代については入居費とは別料金となるなど、施設により異なる)。
こういった施設の入居者が亡くなった場合、ペット達はどうなるのであろうか。施設によるが、入居時に万が一の場合のペットの引き取り手を決定しておく場合や、NPO法人や愛護団体と連携したり、ペット信託制度を利用したり、施設でそのまま預かるというケースもある。
なお、サ高住と老人ホームの主な違いは、契約形態にある。サ高住はあくまでも「賃貸住宅」であり、入居者は事業主と建物賃貸契約を結び、ニーズに応じて別途生活支援サービス契約等を結ぶ。一方、老人ホームの場合は「介護施設」であり、入居者は事業主と利用権契約を締結し、「入浴・排泄・食事の介護」「食事の提供」「家事(洗濯・掃除)」「健康管理」等のサービスを受ける。「特定施設入居者生活介護」という介護保険サービスを利用するため、介護保険料は定額となる。国の管轄も、サ高住は国土交通省、老人ホームは厚生労働省と異なる。
ペット可サ高住・老人ホームの費用
サ高住や老人ホームの費用は施設・サービス内容により大きく幅があり、ペット可の場合でも同様である。施設により入居時費用や月額利用料等の設定が異なるため一概に比較はできないが、例えば首都圏で5年入居した際の費用をみると、ペット可サ高住の場合、高額なケースでは5年で約6,000万円、安価なケースで約600万円、ペット可老人ホームの場合は、高額なケースで約1億4000万円、安価なケースで約500万円である(具体的な費用やサービスについては検索サイト(参考:みんなの介護)や施設の個別サイトでご確認ください)。
事例紹介
ペット可サービス付き高齢者向け住宅 ゆうペットシニア
神奈川県座間市のペットが飼える自立型・サ高住。代表の瀬戸強氏は介護福祉士として有料老人ホーム、デイサービス等の職員を経て2015年より「ゆうペットシニア」の運営を開始。ペットシッター士や愛玩動物飼養管理士の資格を持つ。
ペット可特別養護老人ホーム さくらの里山科
社会福祉法人「心の会」が運営する特別養護老人ホーム。同法人は「ご高齢者様に人生を楽しんで頂きます。老後を心豊かに過ごして頂きます」を理念とし、高齢者在宅福祉施設や知的障害者施設などを運営している。公益財団法人日本動物愛護協会第8回日本動物大賞社会貢献賞を受賞(2016年2月)。
【参考ページ】
■ゆうペットシニア代表インタビュー「ペット可サービス付き高齢者向け住宅が促す、自立した老後の過ごし方」
■さくらの里山科施設長インタビュー「ペット可特養「さくらの里山科」による、諦めない介護」
■「ペット可賃貸」の現状について
■ペットの高齢化の現状と生ずる問題