2016年 全国犬猫飼育実態調査の結果について

2017年7月27日

目次

飼育頭数と高齢化
飼育頭数や平均寿命の変化とその背景にある要因について考察しています。
需要のあるサービス
現状飼育者が不都合に感じていること、今後期待できるサービスについて考察しています。
ペット飼育のマナーに関して
今回の調査で質問が追加されたマナーについて考察しています。

飼育頭数と高齢化

一般社団法人ペットフード協会の「2016年 全国犬猫飼育実態調査」によると、全国の飼育頭数は犬:987万8千頭、猫:984万7千頭と推計された。前年度値(犬:991万7千頭、猫:987万4千頭)と比較して犬猫共にほぼ横ばいであり、近年続いていた犬の飼育頭数の減少が一旦落ち着いたように見える。

詳細を見ると、全国の世帯数は増加傾向にあるが、飼育世帯割合の低下が進んでいるため、結果として飼育頭数が減少しているようだ。全体の世帯数が増加傾向にあるのは、単身世帯が増えていることに起因している。一方、ペットを飼育する世帯のうち単身の割合は、全体と比較して少ない。これは、単身世帯が2人以上の世帯と比べて金銭的・時間的な制約があり、ペットの飼育に消極的になるためだと考えられる。したがって、単身世帯の増加が、飼育世帯割合の低下、および、飼育頭数の減少と関係しているかもしれない。

世帯数と飼育率の推移

出所:一般社団法人ペットフード協会「2016年 全国犬猫飼育実態調査」

各集団別・単身世帯の割合

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出所:一般社団法人ペットフード協会「2016年 全国犬猫飼育実態調査」
及び、厚生労働省「平成27年国民生活基礎調査の概況」
(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa15/)

また、犬の飼育世帯割合が低下しているもう一つの要因として、高齢者の犬離れが考えられる。2012年と現在の犬の飼育割合の差分に着目すると、50、60代は全体平均と比べて大きく低下している。犬の高齢化が進み、犬種によっては15年以上寄り添うことが多くなった今、自分がさらに年を重ね、同時にペットも高齢になった時に、果たして十分に世話することができるのか心配に思う人が多いだろう。実際に、60代の人は、犬の飼育阻害要因として「最後まで世話をする自信がないから」が最も多い。

世代別・犬の飼育世帯割合の推移

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出所:一般社団法人ペットフード協会「2016年 全国犬猫飼育実態調査」

世代別・飼育阻害要因(非犬飼育者、飼育意向あり)

                 出所:一般社団法人ペットフード協会「2016年 全国犬猫飼育実態調査」

一見すると、犬猫の平均寿命は犬:14.36歳、猫:15.04歳となり、前年度(犬:14.85歳、猫:15.75歳)と比べて、犬猫共に低下した。ただし、年齢別に分布をとった場合、犬の幼齢期・成年期(0~6歳)の割合は、引き続き減少傾向にあるようだ。

犬の年齢分布の推移

出所:一般社団法人ペットフード協会「2016年 全国犬猫飼育実態調査」

需要のあるサービス

犬を飼育する上で、不便・不都合なこととして最も多かったのが「医療費が高い」(44.1%)だ。アイペット損保が行った「ペットにかける年間支出に関する調査」によると、当初の想定以上にかかった費用を「治療費」と回答した飼育者は4割を超えており、予想以上にペットの医療費がかかることで、経済的な不都合が生じているようだ。また、アイペット損保の同調査によると、今後ペット関連支出が増えそうだと回答した人のうち、7割の人が治療費やワクチン等の予防費で最も支出が増えそうだと答えている。

その他、「犬と一緒に旅行ができない」「犬を連れて、飲食店に入れない」「犬を連れて泊まれる宿泊施設が少ない」等、外出・旅行に関する不都合が多かった。

犬の飼育上、不便・不都合なこと

2016_5出所:一般社団法人ペットフード協会「2016年 全国犬猫飼育実態調査」

以上のような点に不便や不都合を感じている飼育者が多いため、「あったらいいと思う飼育サービス」として「旅行中や外出中の世話代行サービス」や「健康保険料、生命保険料などが減額になるサービス」が、多くの飼育者に回答されている。今後、従来から存在するペットホテルやDogHuggyのような飼育代行に関する新規サービス、及び、ペット保険のような医療費減に寄与するサービスがさらに洗練されることで、多くの飼育者に利用されるようになるだろう。

また、「高齢で飼育不可能な場合の受入施設提供サービス」や「飼育が継続不可能な場合の引き取り手斡旋サービス」といった選択肢も多く選ばれている。上述の理由で高齢者はペットを飼い始めることに消極的になりやすいため、これらのサービスが充実することで飼育阻害要因は取り払われ、多くの人がペットを迎え入れることができるだろう。また、こうしたサービスが充実することで、飼育を継続することができなくなった人が保護センターに譲渡したり、最悪の場合、捨ててしまうケースを防ぐことができるため、殺処分数の減少にも繋がる可能性がある。

あったらいいと思う飼育サービス

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出所:一般社団法人ペットフード協会「2016年 全国犬猫飼育実態調査」

ペット飼育のマナーに関して

今回の調査から、飼育マナーに関する調査項目が追加された。飼育者の中でペットの家族化が進む一方で、飼育をしていない人への配慮もまた考慮すべき点である。

調査によると、飼育に関する守るべきマナーに関して、非飼育者と飼育者の間には大きな意識の差はないようだ。ただし、「公共交通機関ではケージに入れて乗ること」という項目では、非飼育者と飼育者の間に14%程の差が見られる。

犬の飼育者・非飼育者間でのマナー意識の差異

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出所:一般社団法人ペットフード協会「2016年 全国犬猫飼育実態調査」

さらに、自宅で犬を飼育し始めた時期別に集計した結果によると、非飼育者の要望が最も多かった「排泄物をきちんと始末すること」に関して、飼育開始時期が浅い人ほど意識が低かった。したがって、飼い始めの人に対してマナー講習を行うことが重要だと思われる。

より詳細にデータを確認したい方は、一般社団法人ペットフード協会「2016年 全国犬猫飼育実態調査」をご覧ください。