【前編】「ペットと人とが共に健やかに暮らせる社会」ってどんな社会?    ~アイペットグループが目指す社会~

2020年11月17日

2020年10月1日、純粋持株会社(完全親会社)であるアイペットホールディングス㈱(以下、持株会社)が設立されました。フリーアナウンサーの木佐彩子さんを迎え、10月より持株会社の顧問となった森本英香氏(元環境省事務次官)、アイペットグループ代表山村の対談インタビューを行いました。持株会社設立の目的、今後の事業展開について、そしてアイペット損害保険㈱(以下、アイペット損保)が企業理念を刷新した背景について、お話を伺いました。

 

私たちが目指す、「ペットと人とが共に健やかに暮らせる社会」

木佐さん:本日は、持株会社設立を記念して、「ペットと人とが共に健やかに暮らせる社会をつくる」をテーマに、新生アイペットについてインタビューをさせていただきます。まず、持株会社設立の経緯からご説明いただけますか。

山村代表:まずは、平素よりアイペット損保をお引き立ていただき誠にありがとうございます。私たちはペット保険会社として、ペットを軸に事業領域を拡大したいという思いを持っていましたが、保険会社という形態では、事業の内容に制約があります。そこで、持株会社に移行することで、保険事業とは別のペット事業を展開することにしました。

木佐さん:今後はどのように事業展開をされていくのでしょうか?

山村代表:人とペットが共に幸せになれるような事業を展開したいと考えています。例えば、不動産事業を通してペット共生型住宅の開発を手掛けていきたいと思っています。ペット可の賃貸マンションは世の中にたくさんありますが、それらは「ペットと一緒に住んでもいいですよ」という住宅ですよね。そのため、ペットを飼育していない人から苦情がでるなど、飼い主さんとペットにとっては暮らしづらい場合があるんです。さらには、猫や大型犬を飼育することができないペット可の賃貸マンションもあります。ですから、ペット共生型住宅の開発から手掛けることによって、ペットと人とが健やかに暮らせる環境を整えていきたいです。

木佐さん:すごく素敵ですね。私は人生で16回ほど引越しをしていて、今年4月にもペット可のマンションに引っ越しました。ワンフロアに4軒入っているのですが、そのうち3軒がワンちゃんを飼育しているんですよ。だから、散歩に行くときにうちの子が喜んで吠えたとしても、ほかのお宅のワンちゃんも吠えることがあるので、お互い様なんです。住民同士が犬友だと、すごく気が楽です。

山村代表:そうでしたか。ペット可のマンションにはペットを飼育されていない方や動物アレルギーの方も住んでおられる可能性があります。ペットを飼育することで、肩身の狭い思いをしているという話も聞きます。これでは、飼い主さんもペットも、そしてペットを飼育していない方にとっても、幸せではありませんよね。

森本顧問環境省では『動物の愛護及び管理に関する法律』を所管しています。「愛」という言葉が入っている法律は、ほとんどありません。環境省では、人々が動物を愛しながら暮らせる社会の実現を推進するために、「住宅密集地における犬猫の適正飼養飼育ガイドライン」(※1)を作成しています。ペットと人とが共に健やかに暮らすという、一種の理想郷とも言えるコンセプトはとてもいですね。

山村代表インフラの整備という観点では、動物の健康やしつけ、介護などに関する分野にも取り組むことによって、よりペットにとって過ごしやすく、より健康でいられるようにしたいと考えています。

今、注目を浴びている「ペットの災害対策」

木佐さん:日本では、毎年大きな災害に見舞われています。ペット災害対策への取組みについてお聞かせください。

山村代表:ペット災害対策は、今後力を入れていきたい分野です。2019年の台風19号で、多摩川が氾濫した際の唯一の犠牲者は、マンションでペットを4頭飼育していた飼い主さんでした。マンション内には、ペットを飼育している住人が多かったそうですが、避難所がペットを受け入れてくれるかはわからなかったため、避難所に行かなかった人が多かったそうです。ペットがいるから避難できなかったとか、一度は避難したけれど、家に残っているペットの様子を確認しに帰る道中で二次災害にあったとか、災害があるたびにそのような事例を聞くため、心が引き裂かれる思いになります。環境省のご協力も得て、アイペット損保が作成した「うちの子健康手帳」には、ペット受入れ可の避難所がどこに開設されているか、事前に確認して記入できるページを設けています。また、被災時にかかりつけの獣医師さんに診てもらえない可能性も想定し、ペットの基本情報や健康情報、ワクチン接種状況なども記載できる仕様になっています。この冊子を記入しておけば、万が一の場合でも、対応できるのではないでしょうか。また、落ち着いた対応は、ペットにとっても安心感につながるのではないでしょうか。

木佐さん:飼い主さんは、しっかりとペットの災害対策をしておくべきですね!

山村代表:そうですね。また、青森県にはアイペット損保の事務センターがあるため、2019年10月に青森県と動物愛護に関する連携協定を締結し、青森県でのペットの災害対策を支援させて頂いています(※2)が、将来的にはこの取組みをさらに広げていきたいと考えています。

森本顧問:2016年の熊本地震の際には、ペットと一緒に逃げたけれど、避難所に一緒に入れなかった方が多くおられました。自動車の中でペットと共に過ごしたことでエコノミー症候群になり、それが原因で亡くなるケースもありました。それ以来、自治体にはペットと過ごせる避難所を設置するように依頼をしているのですが、現在もペットと過ごせる避難所数は少ないため、多くの避難所では屋外のペット預かりコーナーでペットを預けなければなりません。普段は家の中で過ごしているペットも外で過ごし、夏は暑く、冬は寒いという環境にも関わらず、知らないペットや人に囲まれ、一番頼りにしている飼い主さんが近くにいないという、ペットにとっては耐え難い現状です。ですから、民間と自治体の連携でペットの災害対策を推進することは、とても大事だと思います。

木佐さん:ペットには、できるだけストレスを与えたくないですね。また、被災者の中には動物アレルギーの方もいらっしゃるかもしれませんよね。そういう心配をせずに、ペットと一緒に堂々と避難できる避難所があるといいですよね。

森本顧問:そうですね。また2019年に改正された「動物の愛護及び管理に関する法律」では、犬猫の繁殖業者等の動物取扱業者に対してマイクロチップの装着を義務化(2022年施行予定)しました。(※3)マイクロチップを装着することによって、災害時、飼い主さんとはぐれてしまったペットをすぐに見つけることなどを目的としています。また、飼い主さんとはぐれてしまって寂しい思いをしているペットを思うと、マイクロチップを装着した方がいいですよね。

山村代表:マイクロチップの装着も、非常に大切ですね。アイペットグループでも、引き続きペットの災害対策には力を入れていきます!

社会的な課題解決に挑む ~ペット×シニア~ 

森本顧問:超高齢化社会の中で、ご高齢者へのペットの効果について、注目しています。

山村代表:ある研究で分かったのですが、高齢者施設で、ご高齢者とセラピー犬の触れ合いによって、幸福度が135%増加したそうです。要介護と健康の間にある状態のことを「フレイル」と専門用語で言いますが、運動したり、コミュニケーションを取ったりするなど、いろいろな方法によってフレイルのリスクは低くなるのですが、運動だけを行っている人より、周りの人とコミュニケーションを取っているご高齢者の方がフレイルを予防できるという研究結果がでています。つまり、ペットを飼育してお世話をすることは、フレイルを予防するための一因になるということです。2000年にオーストラリアとドイツが行った調査結果では、ペットを飼育している人と飼育していない人の医療費を比較したところ、オーストラリアで年間38.6億ドル、ドイツで年間50.59億ユーロの医療費の削減があったと報告されています。(※4)

木佐さん:この事実を、もっと多くの人に知ってもらいたいですね!

森本顧問:そうですね。このような結果が報告されているということは、飼い主さんとペットは非常に良好な関係が築けていると考えられるため、ペットも幸せになっていると考えられますね。またペットにとって、飼い主さんが健康でいてくれることは、何よりも幸せかもしれませんね。

山村代表:定年退職を迎えられたご高齢者の方は、ペットと一緒に過ごす時間が増えるため、散歩の回数も増える傾向があるそうです。ですから、ペットにとってはとてもうれしいことですね。

森本顧問:そうですね。しかし、ご高齢者の方がペットを飼育することによって、最後までお世話をすることができないなど、問題も浮上していますよね。

山村代表:はい。ご高齢者の方がペットを最後まで責任を持ってお世話をすることができないなどの問題は、解決する必要があると認識しております。そのため、ペットとシニアに関する取組みも、今後の事業として視野に入れています。

木佐さんの愛犬のペロちゃんとモコちゃん。

木佐さん:ところで、ペットを飼育することは命の尊さの勉強にもなるため、子どもへの教育にもいいですよね。うちでは2頭を飼育しているのですが、そのうち1頭は、主人がブリーダーのホームページから見つけてきました。実際に会ったのですが、「この子は少し足が緩く、パテラの可能性があります。(※5)」と言われてしまったんです。そこで、別の子にも会わせてほしい、と提案しました。しかし、当時小学校1年生くらいだった息子が、「歩けなくてもいいから、この子がいい!」と。その時に、「私の方が間違っていたんだ」と、子どもから気付かされました。

山村代表:ペットを飼育するということは、お子さんの情操教育にもいいですよね。また海外の研究では、ワンちゃんを飼育していると喘息が普通の子より10%〜13%起こらなくなるという研究結果も発表されています。ペットにとっても、お子さんと一緒に遊べますし、運動にもつながりますよね。このように、お子さんとペットが一緒に過ごす時間があることで、双方が笑顔になれますね

後編はコチラからご覧ください。

 

※1:環境省発行『住宅密集地における犬猫の適正飼養飼育ガイドライン』:https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2202.pdf

※2:アイペット損保㈱と青森県の協定:https://www.ipetclub.jp/fun/aomori-bousai/

※3: 令和元年改正「動物の愛護及び管理に関する法律」:https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/laws/nt_r010619_39_1.pdf

   マイクロチップ装着義務は2022年施行。

※4:オーストラリアとドイツの年間医療費削減費:http://nichiju.lin.gr.jp/mag/06810/a1.pdf

※5:パテラとは、膝蓋骨脱臼のこと。脱臼により足を引きずる、関節炎を起こす、などの症状が発症する。

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