GREEN DOGが手がける「新しい犬との出会い方」(前編)
株式会社 カラーズ
代表取締役社長 佐久間敏雅氏
1992年、東京大学法学部卒業。同年、P&Gマーケティング本部入社。生理用品や紙おむつなどのメガブランドのブランド・マネージャーを20代にして務める。また、アジア地区での新製品の開発・投入、ブランド・エクイティの確立など、新規事業の立ち上げなどにも深く関わる。2000年2月同社退社。7月株式会社カラーズを設立、代表取締役に就任。現在は会社運営の傍らグロービス経営大学院にてマーケティング・経営戦略の講師も務めている。
通販から人材育成まで。全てはお客様とパートナーの生活をトータルで支えるため
事業内容について詳しく教えてください。
カラーズは、「犬と暮らす喜び、健康、笑顔」をテーマに通販、店舗を始めとして5つの事業を展開しています。
インターネット通販では、パートナー※1である犬たちの「心と身体の健康」のための自然食フード、健康食品を中心としたプライベート・ブランド「feel green」や「Hermoni(アルモニ)」を取り扱っています。
加えて、神戸・サザンモール六甲、東京ミッドタウン、代官山、湘南の店舗では健康を目的としたグルーミング、ホテル、しつけ方教室や各種セミナーなどのサービスを提供することで、お客様とパートナーの生活をトータルでサポートしています。また、「お客様とのコミュニケーションを大切にした医療」をコンセプトに東京ミッドタウン、代官山に動物病院を併設することで、その子にとっての最善のサポートを提案・提供しています。また、2014年12月にオープンしたGREEN DOG湘南では、店内に保護犬譲渡センターを常設し、犬との新しい出会い方を提案しています。
物販やクリニック、動物病院でのサービスにとどまらず、心身両面の日ごろのケアを通じてコンパニオン・アニマルを健康に導くことのできる知識の普及と人材の育成にも力を入れています。日本アニマル・ウェルネス協会認定資格「ホリスティックケア・カウンセラー※2」の養成講座は、受講生が延べ1万人を突破しています。
※1カラーズでは、ペットはお客様のパートナーであるという意味を込めてパートナーと呼ぶ。
※2ホリスティックケア・カウンセラー:健康について全体的で広い視点をもって考え、日ごろの心身両面のケアを通じて、コンパニオン・アニマルを真の健康に導く人のことを指す。
かなり事業が多岐に渡っているようですが、創業当初はどの事業からスタートされたのですか?
いざペット関連の事業を始めるにあたり一飼い主として私自身が「困ったこと」を振り返ってみると、「必要な情報を欲しい時に入手できない」ということがありました。
ですので、お客様同士で情報交換ができる場を作り、ペットの種類や年齢に応じた情報を提供する、SNSのようなサービスを最初の事業として始めました。
お客様には無料で会員になっていただく一方、広告費で売上を立てることを見込んでいました。しかし、資本金の大部分を投じてシステムをつくったのにも関わらず、売上が1円も上がりませんでした。資金は底をつき、会員も3,000名ほどで頭打ちとなり、このままだと何もしないまま会社が潰れそうだという危機的状態でした。
サービスの原点は、フードが原因で愛犬がアレルギーにかかった経験
その後、どうされたのですか?
12月にそのサービスを始めましたがビジネスにするのは難しそうだと分かった翌年2月の時点で見切りをつけ、次の事業を考えた時に思い至ったのが食べ物でした。以前、愛犬がアレルギーにかかったときに原因を辿った結果、食べ物に行きついた経験がありました。現在ではペットに関する情報は溢れていますが、私がペット業界に参入した当時(2000年)はナチュラルフードの概念が広まっていないことはおろか、フードの「安全基準」など整備されていない状態でした。
ビジネスをやっているからこそ私たちは多くの情報を得られますが、当時の私と同様に限られた情報をもとに消費者が商品を選択する場合、著名なドッグフードや店頭に並んでいる商品に目が行きがちです。しかしそれが、「必ずしもその犬にとって最適なフードではない」と知った時、お客様が情報を見て、ご自身で判断をして「いいものだ」と納得した上で購入していただける仕組みをつくりたいと思いました。私と同じような悩みを持つお客様のために、自分が「いい」と思う商品をインターネットを通じて紹介するのがGREEN DOGの始まりでした。
私たちは、メーカーにデータの提出をお願いすることや自分たちで商品をテストにかけることもできます。だからこそ自分たちが責任を持って選んだ商品をお客様に提供するという購買代理人のような役割を担いたいと考えています。創業当初から変わらず安全基準を明確にして打ち出している理由は、お客様に信頼していただくためなのです。
お客様にとっての「何でも屋」でありたい
事業を通じて、どのような社会の実現を目指しているのですか
私たちは、自然に犬が存在している社会を目指しています。例えば日本では犬を連れて行ける場所は限られていますし、犬と一緒に公共交通機関を利用する際にはキャリーバッグに入れることが前提となっています。まして飼い主と犬が一緒に入れるレストランは本当に少ない。当たり前のように、飼い主が犬をどこにでも一緒に連れていくことができる。このような共生社会が実現するためには犬がしっかりとしつけをされていたり、単に制度としてではなく、犬の存在が社会の一員として認められていたりする必要があります。
もちろん、犬をあまり好きでない人もいますが、そのような人たちにとっても、そこに犬がいても迷惑にならない共生社会になって欲しいと思います。「犬は、私たちのパートナーであり、犬もそこにいる権利がある」というような捉え方ができる社会にしたいです。
そのためにも、私たちはお客様にとって、犬のことであればなんでも相談できる存在になるべきだと思っています。お客様は、犬と暮らす中で悩みや心配ごとが出てくると思いますが、一方で「犬とこんなところに行って思い出を作りたい」と思うわけです。私たちはお客様の傍にいて、何か困ったことがあれば解決するお手伝いをしたいと思っています。そう考えると、「何でも屋」であることが望ましいですよね。
フードの販売事業から始めて店舗と通販を2つの軸としていますが、究極の姿を目指すとなると店舗だけではカバーしきれない部分が出てきます。そうすると、商品の品ぞろえを充実させることやサービスのラインナップを増やすことに繋がります。
サービス面で工夫されていることを教えてださい。
お客様と接するスタッフの知識や技術を磨いたり人間力を高めたりすることは大前提ですが、仕組みの面ではデータを駆使したCRMにより提案力を強化しようとしています。そのために「GREEN DOG CLUB」という会員制度を作って、データベースの蓄積を進めています。
例えば、東京ミッドタウンの店舗は1カ月あたり約4,000人のお客様から買い物やトリミングのご利用を頂いています。4,000人分の情報を人間の脳で覚えることは難しいでよね。将来的には、お客様が利用されたサービスをデータで把握することによって、2回目以降にお越しいただいた時に会話のツールの一つとしたいと考えています。今まで継続してきたことを磨き上げていくことで、お客様の困った場面でいろんな提案をしていくつもりです。
業界内の障壁はお客様にとって大きな損失。佐久間氏が描く理想のサービスとは
物販とトリミングサロンの店舗の中に動物病院が併設された施設をつくったのにはどのような理由があるのですか?
私は一飼い主として獣医業界と一般的なペット業界に大きな溝があると常に感じてきました。例えばフード1つとってみても、お客様が獣医師から「このフードをあげてください」と言われた後、ペットショップに行って同じことを相談すると「このフードは良くない」と言われて、「どちらが本当なのだろうか」と悩むことが多々あります。これはお客様とパートナーにとって決して好ましい状態とは言えないでしょう。私たちは、ペット業界が一体となってお客様をサポートする仕組みを作っていきたいと思っています。
世の中には、1つの場所で医療からトリミング、一時預かりとあらゆるサービスを提供するところが増えてきています。しかし、物理的な距離が近くなったとしても、各サービスが本当に連携してお客様に最善のご提案ができているかというと疑問です。現在は、「業界内の溝を無くしたい」という思いから、ショップの機能を持つGREEN DOGの中に動物病院とトリミングサロンを併設し、理想のサービスを提供するチャレンジをしているところです。
【後編はこちら】
GREEN DOGが手がける「新しい犬との出会い方」(後編)(2015年12月4日公開済み)
設立:2000年7月28日
従業員:98名(常勤役員、パート・アルバイト含む)(2015年3月末時点)
事業内容:
- 犬たちの「心と身体の健康」のための自然食フード、健康食品を中心とするプライベート・ブランド「feel green」や「Hermoni(アルモニ)」を通販事業にて取り扱う。
- 神戸・サザンモール六甲、東京ミッドタウン、代官山、湘南の店舗では健康のためのグルーミング、ホテル、しつけ方教室や各種セミナーなどのサービスを提供。2014年12月にオープンしたGREEN DOG湘南では、店内に保護犬譲渡センターを常設。
- 日本アニマル・ウェルネス協会認定資格「ホリスティックケア・カウンセラー」の養成講座を開講。(2014年7月に受講生が延べ1万人を突破した。)
- コンパニオン・アニマルの医療環境の向上をめざし、「オーナー様とのコミュニケーションを大切にした医療」をコンセプトとした動物病院の運営。
- 直輸入しているペットフード等の卸問屋、小売店、動物病院等への販売。