ペット版Airbnb:DogHuggyを率いる19歳起業家が目指す犬の幸せ(前編)
株式会社DogHuggy
代表取締役 長塚翔吾氏
DogHuggy(ドッグハギー):
高校在学中の2015年2月に投資育成事業・ベンチャーキャピタル事業を展開する株式会社サイバーエージェント・ベンチャーズの出資を受けて株式会社DogHuggyを設立。(当時18歳)同年3月に麻布大学附属渕野辺高等学校を卒業。旅行や外出で犬をお世話して欲しい飼い主と、
前編では、長塚さんが高校在学中に起業に至った経緯からサービスの概要まで伺う。
後編では、DogHuggyの今後の展開やペット業界の「課題」に迫る。
理想とする「犬の幸せ」を追求できる会社が日本にはなかった
今19歳とお聞きしていますが、いつ会社を作ろうと思ったのですか。
起業をしたのは高校在学中のことでしたが、当初は起業をするつもりなど全くありませんでした。元々は獣医師になりたかったのです。中学時代には獣医師になりたいと強く思っていましたから、親に「プレゼン」をして引っ越しまでしてもらいました(笑)。当時住んでいた場所が学区外で通えない、獣医大学の附属高校に行きたかったので、「父親の勤務地に近い東京の方が父親にもメリットがあること」、「その学校に行けば、職業に就く際に自分はこれだけ有利である、成功の確率はこちらの方が高い」ということを「プレゼン」しました。ちなみに犬を初めて飼うときも両親に「プレゼン」をしています(笑)。
無事志望校に入学をしまして、「動物福祉」の授業を受けた際に日本が海外と比べていかにペットに対する環境が整備されていない国であるかということに気がつきました。例えばドイツでは犬と一緒に電車に乗れたり、レストランに一緒に入れたりと環境が整っています。一方で、このままでは自分は臨床中心の専門家的な立ち位置となるため、ペット業界の環境整備をする側にはなれないだろうと漠然と思っていました。もちろん専門的な立場から問題に取り組む方法もあると思いますが、「自分で仕組みを作りたい」と強く思うようになっていました。日本の動物福祉について調べて行くうちに「このままだと、いつまでたってもペットの置かれている環境は変わらないのではないか」という危機感にかられ、その気持ちを共有するために同級生に話したところ、「そうなんだ。でも仕方ないよね。」というような反応が返ってきました。正直、がっかりしてしまいました。知ってしまった以上は日本のペット業界の現状を放っておけない、自分でも何かしたいという気持ちを抑えられなくなったのです。
まず自分の持っている問題意識・課題を根本から解決できそうな会社や団体を探すことから始めましたので、当初は起業など思いも寄りませんでした。残念ながら自分の希望を叶えられる場所を見つけることができません。誰もやらないのであれば「自分が解決しよう」と危機感に突き動かされて起業を決意しました。
自宅最寄りVCに行ってみたら、ちゃんと相談に乗ってくれた上に出資まで!?
起業を決意してから会社を設立するまで、どのように準備を進めましたか?
高校3年生の春に起業を決めてから市場調査をし、夏休みは事業内容についてひたすら考えました。周りに起業経験を持つ人がいなかったため、インターネットを駆使して知識を得た後、会いたい人にお金を払って会うサービスを使って企業家に会いにいきました。会社の方向性を固めてからはFacebookのメッセージで直接連絡を取って話を聞くことを繰り返しました。新しい人との出会いが毎日のようにありましたので、ここ1年で集めた名刺は1,000枚にも上っています。サービスのイメージを固めてからは、「家から一番近いVC(ベンチャーキャピタル)はここだ!」ということで気軽な気持ちで株式会社サイバーエージェント・ベンチャーズに相談をしたところ、快く受け入れて下さり、出資もいただいて起業に至りました。
犬はDogHuggyの大切なユーザー。だから安易にホスト(預かり主)は増やさない
DogHuggyの事業内容について教えてください
旅行や外出時などで愛犬の世話ができない飼い主と預かる人(以後ホスト)をマッチングするサービスである「DogHuggy(ドッグハギー)」を提供しています。利用手続きは全てweb上で完結するため、とても簡単です。利用者はまず、希望の日時や場所、愛犬に関する情報を入力して、希望の条件に合致したホストを探します。予約が完了したら、あとは愛犬を預けるだけです。DogHuggyの主なユーザーは40代の主婦の方が多いですね。
犬がユーザーというのはどういう意味なのでしょうか?
DogHuggyの場合、ユーザーが三者います。飼い主・ホストはすぐに思いつくのですが、忘れてはいけないのが犬です。私は犬の幸せについて日々考えていますが、私の思う彼らの幸せというのは、犬達が優しさや温もりを感じ、安心できる人が側にいてくれることなのではないかと思います。犬というのは、群れの動物であるため、1人のままにしておくと満足感が低くなるのではないかと思います。だからこそ、いつも傍にいて慈しみ、愛情を注いでくれる存在が近くにいる状態を犬に提供したいのです。
ホスト(預かり主)はどうやって集めているのでしょうか?
ホストは人伝いで紹介して頂くことが一番多いです。ホストを希望する方は現在犬を飼っている方だけでなく、過去に動物関連の仕事をされていて「犬と触れあいたい」という方が多いです。現在、ホストの希望者には私が一人ひとりお会いしているので手間はかかりますが、預ける方や犬の安心・安全を最優先としています。ノウハウを溜めて私以外の人でもホストの審査が出来るような基準作りをして事業を拡大させていくつもりです。
懐かしくて温かい!ペット版Airbnbを支える構想とは
どのような経緯でそのサービスを考え付かれたのですか?
私自身、物心のついたときから犬が好きで両親に「(犬を)飼いたい」というお願いをしていましたが、なかなか実現しませんでした。犬を飼えない寂しさもあり、近所の方が旅行等で犬を置いていかなければならない場合には進んで犬の世話をしていました。この経験は私の中でとても価値のある体験だったと思います。幼い頃の自分のように、犬と一緒に暮らしていない方でも「犬と触れあいたい」という気持ちを持っている方はいるはずです。DogHuggyは単に犬を預けるためのマッチングサイトではなく、幼い頃に感じた気持ちをサービスに取り込んだという側面もあります。
今後、人口が減って共働きの家庭も増えていくという市場環境の中で、新しく犬を飼うことはハードルが上がると思います。しかし、メインで飼っている人とその周りにいるサポーターで1頭の犬のお世話をする「ペットの世話のシェアリング」という形で新たな犬との関わり方が実現すると思います。昔の子育てとか介護のようにコミュニティー皆で犬を飼っていくんだというイメージです。
前編では、長塚さんが起業に至った経緯からサービス概要まで伺った。
後編では、DogHuggyの今後の展開やペット業界の「課題」に迫る。(2016年2月22日公開済み)
会社名:株式会社DogHuggy
本社所在地:〒163-0225 東京都新宿区西新宿2丁目6-1 新宿住友ビル25F
設立年月日:2015年2月9日
代表取締役:長塚翔吾
事業内容 :犬の飼い主とホスト(預かり主)をマッチングするサービス「DogHuggy」の運営