日本の動物愛護法 -目的・改正のポイント・海外との比較-

2016年11月25日

 

日本では、人と動物の共生する社会の実現を図る法律として、「動物の愛護及び管理に関する法律」が制定されている。その歴史、平成24年の法改正の概要、海外との比較をみていきたい。

「動物の愛護及び管理に関する法律」とは

昭和48年に「動物の保護及び管理に関する法律」として制定され、その後平成11年に現在の名称に変更されている。

目的は、動物の愛護と適切な管理による「人と動物の共生する社会の実現を図る」ことだ。命を大切にするだけでなく、動物を正しく飼養することにより、動物による人の生命・身体・財産に対する侵害や、生活環境の保全上の支障(騒音・悪臭など)を防止することを目指している。

また基本原則として、動物をみだりに殺傷したり苦しめたりすることなく、動物の習性をよく知り適正に取り扱うようにしなければならないと定められている。

(目的)
第一条 この法律は、動物の虐待及び遺棄の防止、動物の適正な取扱いその他動物の健康及び安全の保持等の動物の愛護に関する事項を定めて国民の間に動物を愛護する気風を招来し、生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養に資するとともに、動物の管理に関する事項を定めて動物による人の生命、身体及び財産に対する侵害並びに生活環境の保全上の支障を防止し、もつて人と動物の共生する社会の実現を図ることを目的とする。

動物に関する社会テーマの一つとして「殺処分問題」は根深く存在するが、問題の根源には動物の飼育能力や責任感の低い飼育者の存在が一つとして考えられる。こうした殺処分問題の解決の基礎として、動物愛護法は重要な役割を担うのではないだろうか。

出典:動物の愛護及び管理に関する法律(環境省)
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/laws/nt_r010619_39_5.pdf

法律の歴史

動物愛護法は、これまで動物に関する世論の高まりに応じて数回にわたり法改正が行われてきた。特に、平成に入ってからは3度の改正が行われている。

 動物愛護法のこれまで
1973年(昭和48年) 「動物の保護及び管理に関する法律」制定
1999年(平成11年) 法改正(名称変更、動物取扱業の規制、飼い主責任の徹底、虐待や遺棄に関わる罰則の適用動物の拡大、罰則の強化など)
2005年(平成17年) 法改正(動物取扱業の規制強化、実験動物への配慮、特定動物の飼養規制の一律化、罰則の強化など)
2012年(平成24年) 法改正(終生飼養の明文化、動物取扱業の規制強化、罰則の強化など)

出典:動物愛護管理法(環境省)
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law/revise_h24.html

平成24年の法改正の概要

平成24年の法改正は主に下記の6点がポイントとなる。
1 動物取扱業者(犬猫等販売業者)の適正化
2 多頭飼育の適正化
3 犬及び猫の引き取り
4 災害対応
5 その他(終生飼養に係る努力義務等)
6 罰則

1 動物取扱業者(犬猫等販売業者)の適正化

犬猫の適正な取り扱いを確保するために、犬猫等販売業者に対して、「犬猫等健康安全計画」の策定が義務付けられた。背景には、犬猫の販売において、慎重な取り扱いが求められる幼齢期の動物への配慮や劣悪な環境における過剰頻度での繁殖が見られること、また販売が困難になった際の取り扱いが不明確であったことがある。

この犬猫等健康安全計画には、以下の事項を記載する必要がある。

■幼齢の犬猫等の健康及び安全を保持するための体制の整備
犬猫の健康状況の確認体制(確認の頻度、健康状態の記録方法等)、獣医師等との連携状況(かかりつけの獣医師名等)など
■販売の用に供することが困難となった犬猫等の取扱い
需給調整の方法(仕入れ方法等)、販売が困難になった或いは繁殖に適さなくなった犬猫の取扱(具体的な譲渡先や愛護団体等との連携等)など
■幼齢の犬猫等の健康及び安全の保持に配慮した飼養・保管・繁殖・展示方法
生後56日※を経過しない時点での取扱方法、飼養施設の管理方法、ワクチン接種やマイクロチップ装着の実施方法、具体的な繁殖回数や幼齢・高齢期の繁殖制限、幼齢の犬猫に配慮した展示方法など(※平成28年8月31日までは45日、それ以降別に法律に定めるまでの間は49日)

2 多頭飼育の適正化

多頭飼育に起因する生活環境上の支障が生じている場合、都道府県知事は飼い主に対してその状況を改善するための勧告・命令を行うことができる。平成24年の法改正により、勧告・命令の対象となる生活環境上の支障の内容が明確化され(騒音、悪臭、動物の毛の飛散、多数の昆虫の発生等)、また虐待のおそれのある事態についても勧告・命令の対象に追加された。

3 犬及び猫の引き取り

都道府県等は犬や猫の所有者から引き取りを求められた場合、引き取りを行うが、引き取りを拒否することが出来る事由が明記された。

■動物取扱業者から引き取りを求められた場合
■犬や猫の所有者から引き取りを繰り返し求められた場合
■繁殖制限の助言に従わずに子犬や子猫を何度も産ませた場合
■犬や猫の病気や高齢を理由とする場合など

また、引き取った犬や猫の返還及び譲渡に関する努力義務規定が設定された。

4 災害対応

都道府県が策定する「動物愛護管理推進計画」に、災害時の対応について記載することが義務付けられ、動物愛護推進員の役割に災害時の協力が追加された。また飼い主としても、災害時に備えた準備や災害時の同行避難が求められる。

5 その他(終生飼養に係る努力義務等)

所有者の責務として、終生飼養や適正な繁殖に係る努力義務が加えられた。

(動物の所有者又は占有者の責務等)
第七条  動物の所有者又は占有者は、命あるものである動物の所有者又は占有者として動物の愛護及び管理に関する責任を十分に自覚して、その動物をその種類、習性等に応じて適正に飼養し、又は保管することにより、動物の健康及び安全を保持するように努めるとともに、動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、生活環境の保全上の支障を生じさせ、又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない。
(中略)
4  動物の所有者は、その所有する動物の飼養又は保管の目的等を達する上で支障を及ぼさない範囲で、できる限り、当該動物がその命を終えるまで適切に飼養すること(以下「終生飼養」という。)に努めなければならない。
5  動物の所有者は、その所有する動物がみだりに繁殖して適正に飼養することが困難とならないよう、繁殖に関する適切な措置を講ずるよう努めなければならない。

なお、終生飼養を支援するサービス(老犬・老猫ホームやペットシッター等)については、日本における50歳以上の利用率はわずか6%に留まっている(詳細:ペットの終生飼養に関する調査)。

6 罰則

虐待の具体的事例を明記され、愛護動物の殺傷・虐待・無登録動物取扱・無許可特定動物飼養等についての罰則が強化された。

出典:平成24年に行われた法改正の内容(環境省)https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law/revise_h24.html

海外との比較

英国の場合

英国では、「1911年動物保護法」が現在の動物保護制度の基礎を築いている。同法律成立が、様々な動物保護関連の法令が制定され、「2006年動物福祉法」によって動物福祉に関する20以上の法規が整理・統合された。動物取扱業と関連する主な法令としてはペット動物の販売を規制する「1951年ペット動物法」、動物収容施設の保持等につき規制する「1963年動物収容施設法」、繁殖業者による犬の販売を規制する「1999年動物の繁殖及び販売(福祉)法」等がある。

ドイツの場合

ドイツでは1933年に「動物保護法」が制定されている。第2次世界大戦後、何度も改正されており、特に1986年の改正で法律の目的を「同じ被造物たる動物に対する人の責任として、動物の生命や健康を保護することになる」旨を示したこと、さらに1990年に「動物はものではない」と定められ、2002年には憲法に動物保護の規定を盛り込む改正も行われた。動物取扱業と関連する法令としては、2001年に制定された「犬の保護に関する命令」等が重要な法令となっている。

米国の場合

米国では、1866年に米国動物虐待防止協会が設立され、法制としては1966年に「動物福祉法」が制定されている。動物取扱業と関連する法令としては、2011年に、繁殖業者によるインターネットを通じた動物販売が大規模化し、これらの業者が動物福祉法の規制下に入らないため、これらの業者を規制するための「子犬の統一的な保護及び安全に関する法律案」が提出されている。その他、悪質なブリーダー等から消費者を保護するための法案が、州レベルにおいて制定されている。

(参考文献)「諸外国における動物取扱業をめぐる法制」諸橋邦彦

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