ペット卸売産業の市場動向
サマリー
大手ペット卸売企業の動向に見る、産業全体のトレンドは以下の3つ。
■チャネルの「多様化」と「集中」
■独自商品の開発
■販売・管理の支援強化
ペットフード等に見られるプレミアム志向を受けて、商材やチャネルの開拓が必要となりそうだ。
ペット卸産業のプレイヤー
ペット卸は寡占化が進み、市場シェアの大半は大手5社によって占められている。業界を代表する主要企業は以下の5社だ。
■ジャペル株式会社
■エコートレーディング株式会社
■三井食品株式会社
■ラブリー・ペット商事株式会社
■株式会社リョーショクペットケア
現状はジャペルとエコートレーディングの2強状態だが、2011年に日本ペネット株式会社から事業譲受した食品系卸の三井食品が特に業績を伸ばしている。
その他、地域や商材に特化した中堅・小規模の卸事業者が存在する。
主要企業に見るペット卸産業の動向
近年、ネットショッピングの普及やペット飼育の質の向上等が影響してペット飼育者の購買行動が変化している。そして、それに伴いペット卸の直接取引先であるメーカーや小売業者もまた様子を変えている。ネットショッピングの普及による卸を介さない取引の増加やリアルチャネルの売上減少、さらには、プレミアム志向による人気商品の変化等、様々だ。
このような環境の中で売上を伸ばすため、ペット卸各社はそれぞれの強み・方向性を持って戦略を立てているようだ。それらをまとめると、①チャネルの「多様化」と集中、②独自商品の開発、③販売・管理の支援強化、という3つのトレンドが見られた。
①チャネルの「多様化」と「集中」
現状、ペット卸の最大の取引先はホームセンターやディスカウントストアであり、その後にスーパーやペットショップ等が続く。しかし近年は、チャネルの水平的(取引地域)・垂直的(取引先の種類)な多様化が進んでいる。
ジャペルは、2015年10月に盛岡営業所を開設、2016年6月には関西物流センターを開設しており、取引地域の拡大を目指していることが窺える。また、ペットサロン等のペット関連サービスの需要が伸びていることを受けて、ペット専門の店舗とも取引が増えているようだ。その他、三井食品は、食品系卸として持つスーパーやドラッグストアとのコネクションを利用していると考えられる他、爽快ドラッグ等のネット通販サイトにも流通させていることが確認できる。
このようなチャネルの多様化が進む一方で、特定の取引先に注力をする企業もある。ラブリー・ペット商事は、「PETポチっと」というペット専門店専用の仕入れサイトを用意しており、ペット専門店がより柔軟に商品の仕入れや情報取得ができるようなサービスを提供している。さらに、「ネット通販ビジネスサポート」という事業を行っていることから、顧客セグメントの中でも「ネット通販サイト」に注力していることが窺える。
②独自商品の開発
主要ペット卸企業の中でも、メーカーや小売店と協力してPB(Private Brand)商品を開発・製造している企業が見られる。三井食品は、近年のプレミアムフード志向に合わせて素材と品質にこだわったペットフードを製造・販売している。中でも「一汁一菜」というブランドから犬が食べられる親子丼や肉じゃがを発売している。ペットの家族化というトレンドを反映させた商品設計だ。
その他、ジャペルは、小売店に対してオーダーメイドで独自商品を開発する事業や、海外の大手メーカーと提携することで、国内他社が提供出来ない商品を卸すことができる。
③販売・管理の支援強化
ホームセンター等の成熟したチャネルでは、競争激化が必至だ。従って、ペット卸としては卸売事業に何らかの付加価値を付けることで競合との差別化を図る必要がある。
ネット通販によるペットフード・用品の購買が増えるに連れて、ホームセンター等のリアル店舗における売上は減少することが見込まれる。これに対し、ペット卸側は卸売事業に付加価値を付けるべく、自社で保有する情報を活用したマーケティング支援に注力している。
エコートレーディングは、収集した販売データを基に、小売店舗における陳列の棚割をコンピュータ上でシミュレートし、売上高の予測や効率的な配置等を提案している(エコートレーディングHPより)。ジャペルは「売り場のプロデュース」として、季節や流行を捉えた商品や企画の提案を行っている。また、ラブリー・ペット商事は、上述した「PETポチっと」により、小売り側の仕入れ手続きの手間を省く等、各社差別化のために+αのサービスを付加しているようだ。
ペット卸産業の課題と今後
飼育者の意識の向上を受けて、ペットフード市場では今後、より質や安全性の高いフード(プレミアムフード、スーパープレミアムフード)の需要が高まると予想されている。ペット卸としては、こうした質の高いペットフード(あるいはペット用品)を独自に提供できることが一つの強みとなるだろう。また、飼育者の意識の向上により、ペットサロンやペットホテルといったペット関連サービスの利用が増えると推測されるので、こうしたペット専門店との取引が今後さらに増えそうだ。
さらに、今後大手が営業地域の拡大と商材特化を進めることが予想されるため、地域や商材に特化した戦略をとる中堅・小規模のペット卸は、何らかの打ち手が必要となるだろう。
【参考ページ】
■ペット卸売の主要企業5社
ペットフードや用品の流通を担うペット卸売市場において、高いシェアを有する主要5社を紹介しています。
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