ペットのしあわせと業界の発展を目指す、獣医師専用サイト「ベットピア」

2015年12月16日

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株式会社Zpeer-ズピア

株式会社Zpeer-ズピア
副社長 兼 COO 藤本 裕氏(左)CFO 兼 CTO 栫井 誠一郎氏(右)

藤本氏:東京大学大学院工学系修士、コーネル大学MBA(総合成績トップ10%の優秀賞受賞)
ZS Associates, ロサンゼルスオフィスで、製薬企業に対する経営コンサルティングに従事した後、大塚製薬のグローバル事業部分析担当部長に就任。
2013年2月に大塚製薬を退職、6月に株式会社 Zpeer を創業。


栫井氏:東京大学工学部卒業後、2005年に経済産業省(国家1種)入省。
マクロ経済政策、外国人留学生と日系グローバル企業のマッチング、研究開発政策、法律改正、内閣官房への出向時は政府のIT・情報セキュリティ政策を担当。2011年退職。
退職後はWebサービス企画/開発を中心に活動した後、2013年6月、株式会社Zpeerを共同創業。
ライフワークとして、官民連携のサポート(政策目的とビジネスのwin-winのアドバイス、提案サポート等)も実施。

人医療品業界と動物医療品業界のギャップに着目した3人のビジネスマン

事業内容について教えていただけますか。

藤本氏:獣医師コミュニティ「Vetpeer」を運営しています。これはメーカーが提供する最新の医療情報や獣医師間での情報交換など、獣医師の先生方に役立つ情報が無料で手に入るプラットフォームです。獣医師と動物医療関連企業が双方で繋がりあえることを目的としています。他に動物医療関連メーカーに対して市場調査、コンサルティングなどのマーケティングサポートを行っています。

何故このビジネスを始めようと思われたのですか?

Zpeer2藤本氏:前職で、人医療品業界と動物医療品業界どちらも経験する機会がありました。同じ医療品業界ではありますが、業界規模や仕組みが全く違うので、色々なサービスがあったりなかったりするのは当然だと思っています。しかし、人医療品業界にはあり動物医療品業界にはないもので、かつ獣医師のニーズもメーカーのニーズも満たせていないものがあるとずっと感じていました。それが、「医療情報を効率的に収集できる環境」でした。人医療品業界は10兆円という規模で、多くの営業員が最新の薬や機器の情報を先生に直接またはwebサービスを通じて伝えることができます。一方動物医療品業界の場合、営業員の数が人医療に比べて少ない上に獣医師先生がwebを利用して情報を得るサービスも十分ではありませんでした。もし獣医師とメーカー両方のニーズを満たせる事業があったら双方の役に立ちますし、業界の発展にも繋がると思いました。

野川社長と藤本COO、そして栫井CTOの3人で経営をなさっていると思いますが、もともと皆さんお知り合いだったのですか。

藤本氏:実は、野川は私の前職でのクライアントなんですね。当時野川は日本最大級の動物医薬品メーカーの小動物医療薬品領域の責任者をしていました。製薬会社のコンサルティングをしていた私はあるプロジェクトを通じて彼と出会い、お互い動物医療品業界において同じ課題意識を持っていることに気付きました。
栫井とは、とある学生向けのビジネス交流イベントでたまたま隣の席だったというのが出会ったきっかけです。それがちょうどズピア創業の4カ月前でした。その時は少し会話をした程度だったのですが、当時私は一緒にズピア立上げに携わってくれるメンバーを探していたということもあり、後日私から栫井をカフェに誘い、思い描いているビジネスの構想について話を持ちかけました。そしてカフェでの約40分間の話の間に意気投合して今に至ります。

官僚を辞めていきなり起業!?その行動の原動力とは

藤本さんと出会うまで、栫井さんはどんなキャリアを歩まれてきたのですか?

栫井氏:私は大学を卒業後、経済産業省に入省し、マクロ経済政策、外国人留学生と日系グローバル企業のマッチング、研究開発政策、法律改正、内閣官房への出向時は政府のIT・情報セキュリティ政策など様々なことを担当しました。その後、システム受託の会社を起業し、2年間一人で経営をしていました。

そもそも栫井さんはなぜキャリア官僚から独立し、民間へ転職されたのですか。

Zpeer3栫井氏:官僚として働く中で、「日本を良くするために自分ができることは、むしろ民間企業で働くことなのではないか」と思ったことが、官僚を辞めた理由の一つですね。と言うのも、官僚は日本を良くするために日々仕事をしているのですが、なかなか結果が見えづらいんですよね。自分が一生官僚を続けたとして、「自分が日本をなんとかしたい!」と思った時にどこまでのことが出来るのだろうと思いました。そして、官僚は民間企業が働きやすいように環境を整備することを本業としている一方、実際に世の中を良くするためには企業がどう動いていくかということが大事だと気がついたのです。個人的な見解ですが、以前のように官僚が旗振り役で民間企業を引っ張っていた時代から、徐々に民間企業と官僚が支え合い、民間からも新しい知恵や知識を提案していく時代に変わりつつあると思っています。官僚を経験し、ある程度人脈がある自分だからこそ、今後は民間企業に入って必要な情報を各省庁にフィードバックすることで法律などに活かしてもらい、トータル的に社会に貢献できるのではないかと考えましたね。

それでも官僚を辞めて起業する方は珍しいですよね。他にも何か理由があるのですか?

栫井氏:官僚を辞めたもう一つの理由として、「公務員では身に着かない感覚」というものを自分の人生の中で経験したかったということもあります。例えば、商品やサービスの価格を決めて営業して、お金を支払ってもらい、そのためにどんな価値を提供すれば良いかを考えるというのは公務員では経験したことがありませんでした。そもそも「売上」という概念もなかったので、そういう感覚を身につけるためにまずは民間で働く基礎を体を張って全部経験しようと思い、起業に至りました。官僚をやめて1人で始めたシステム受託の仕事では、実際にプログラミングも行い、フリーランスのエンジニアと組んでシステム開発のプロマネも行い、web関係の感覚を一通り経験できたことは私にとって大変良い経験でした。もちろん相当の苦労もあり、官僚を辞めてから毎月貯金が減っていき、最初に法人の口座に1円以上入るまで半年以上かかりました。その時は涙が出そうなくらい嬉しかったですね。起業して実績を重ねる中で、少しずつクライアントやチームメンバーにも認めてもらえるようになり、自分の中で大事な経験になりました。

藤本さんからズピアのビジネス構想を聞いたとき、率直にどう思われましたか?

栫井氏:まさに自分が求めていたビジネスだと思いました。当時私は官僚を辞めてシステム受託の事業を2年間1人でやっていたのですが、自分で価値を発信していける自主事業であり、かつ業界の中にイノベーションを良い形で起こしていけるポテンシャルが十分あるというのは、今までのキャリアでは実現できなかった社会への貢献の仕方ですので、そこに携われることはすごく魅力的でした。

今までペットには関わりがなかったと思いますが、そういうことに抵抗はなかったのですか?

栫井氏:全くありませんでした。むしろ確実に自分にとってプラスになる経験ができると思いましたね。ペット産業は1.4兆円の業界規模があるにも関わらず、どの省庁もその振興を担当していません。農水省は食肉の安全供給が第一ですし、環境省は動物愛護法を持って取り組んでいますが、どれも「ペット」という領域で振興を担当している部署はありません。普通1兆円を超える産業であればどこかの部署でその産業をどう盛り上げていくか見るはずなのですが、残念ながらペットに関してはどこも見ていないんですよね。自分がペット産業や動物医療品業界に携わることで、獣医師や動物医療品業界などの現場のニーズを霞が関に伝えるメッセンジャー的な役割をしつつ、将来的には官民の懸け橋になれるのではないかと思いました。

実際に栫井さんと出会った時、藤本さんはどんな印象を持ちましたか?

藤本氏:「変わっている人だなぁ」と思いましたね(笑)。
普通、起業しないと思うんですよ。官僚を辞めて、ビジネスの修行をしようと思ったらまずは民間企業に入ると思うんですよね。一緒に働き始めてからもそうですが、栫井はリスクの感覚や安定の感覚が大分人と違いますね。栫井は、安定や目先の報酬よりも、「自分自身が実現したいこと」や「社会的意義のあること」というのを人よりも大きく捉えて仕事をしているように思います。官僚を辞めると決めた時も、普通の方だったら「これから生活していけるのだろうか」と不安になってまずは民間企業に入り修行すると思います。しかし、民間企業に転職するよりもいきなり独立して経営の基礎を学ぼうとしたんですよね。こういった部分は私には真似できないところで魅力的な部分でもありますね。

お二人の仕事での役割分担はどのような感じなのですか?

Zpeer4藤本氏:基本的に会社経営の意思決定は野川を含め3人で行います。担当業務で言えば、私はメーカーへの営業から、市場調査、分析、そしてそのレポート作成など主にメーカーとのやり取りを行っています。栫井はVetpeerの運営などシステムに関することすべてを行っていますね。5人の会社なので、それぞれ担当業務をもたないと会社がまわりません(笑)。今は一緒に働いてくれる6人目の仲間を募集しています。Webマーケティングからコンサルティング業務、営業まで様々なことを経験できます。さらに、創立2年目のベンチャー企業なので、立ち上げからどのようにしてここまで成長してきたのか直接聞きながら学べる環境があります。ビジネスの全体像を見てみたい、それを実際に運営してみたいとお考えの方には是非参加していただきたいです。

ペット業界と日本社会の発展へ邁進する「Vetpeer」

この事業を通じて、どのように業界を変えていきたいとお考えですか。

藤本氏:今は「Vetpeer」を通じた情報提供、情報共有というところから始めていますが、将来的には獣医師先生が医療情報を効率的に学べる環境があり、かつビジネス的にもサポートできる体制を作っていきたいと考えています。そのために、まず獣医師から飼い主に正しい情報を発信して、ペットを動物病院に連れていくフックになる仕組みを作り、業界を発展させたいと考えています。多くの飼い主がペットを動物病院に連れてくる機会が増えれば、獣医療の業界規模の発展にも繋がりますし、獣医師を安定的にサポートすることも可能になりますからね。

目指されている世界を実現するにあたって、今の課題はどのようなものがありますか?

藤本氏:私は、猫が好きでずっと飼いたいと思っていました。しかし、一人暮らしで家にいない時間も多く、ペットと暮らすのは難しいのではないかと思っていました。しかし、今年になって人生で初めて猫を飼い始めたのですが、ペットは「人を幸せにする」という素晴らしい力を持っていると改めて感じさせられました。それだけではなく、ペットと暮らすことは思っていた程難しいものではないことも分かりました。きちんと生活環境を整えてあげて、信頼できるかかりつけの動物病院に相談できれば、安心して飼っていけます。
私の様に、ペットと暮らしたいと思っているのに経験がなくなかなか決心がつかない方は日本に大勢いると思います。育った家庭にペットがいなかった場合、大人になって自分で飼い始めるのはハードルが高いと感じられていると思います。しかし、全国には信頼できる獣医師の先生がたくさんいて、獣医師のサポートの下でペットを安全に飼うことは心配しているほど難しくはないことを、全国に広めていきたいです。
高齢者の心理的サポートやセラピー犬など医療の役に立つこともありますし、ペットは今の日本社会においてすごく重要な役割を持っていると思います。そんなペットの社会的地位が向上することで、結果的には業界の発展や日本の社会発展に繋がるのではないかと思っています。

課題のもう一つは、「ペット」がまだ十分に医療費をかける対象になっていないところではないでしょうか。動物病院全体の市場規模が3000億くらいだと言われていて、犬猫の飼育頭数が約2,000万頭だと考えると、一頭あたり年間1.5万円くらいしか動物病院に使われていないんですよね。医療費としてはとても安いですね。人の医療費だと35~40兆円くらいなので、一人当たり30万円くらい使っていることになります。そう考えるとペットは「家族」として捉えられている割にはかけられているお金が少ないかもしれません。ペットと安心して暮らすためにかかりつけの動物病院を見つけることの大切さを伝えていければと思います。

私たちは、このような課題を解決して、微力ながらも獣医療関係者だけではなく、ペットをとりまく社会が豊かになることを目指しています。

株式会社Zpeer-ズピアの会社概要

株式会社Zpeer-ズピア

設立:2013年6月27日

代表取締役:野川 真義

事業内容:

  • 獣医師向けWebサービスの開発・運営
  • 動物病院のITサポート
  • データ販売、市場調査、コンサルティング
  • Web を活用した広告媒体の提供と広告サポート業務
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