「捨てない飼い主、捨てられない犬を育てる」プレイボゥの挑戦

2017年4月13日

株式会社プレイボゥ


1995年にコンパニオンドッグスクールとして設立した。創業者の森山氏は、日本で初めてパピーパーティーを開催した。ミッションである「犬と一生一緒宣言」を普及・実現していくために、以下の事業を展開している。
① 店舗事業:ホテルやトリミングサロン、しつけ教室の運営
② ドッグトレーナー養成事業:正しい知識・スキルをもった質の高いドッグトレーナーを輩出するスクールの運営

Q.貴社は2001年に日本で初めてパピーパーティーを開催したと伺っています。

パピーパーティーは、生後半年までの子犬が他の子犬たちと触れ合える場所のひとつです。ペットショップから迎えた子犬は、飼い主さん以外の人間や他の犬と接する機会をほとんど持たないまま、成長していきます。「人間の子供が友達との遊びを通してコミュニケーションの取り方を学ぶのと同様に、子犬も他の犬と触れ合いながら社会性を身につけることが大切だ」という創業者の考えから、パピーパーティーは始まりました。こういった社会化をきちんと入れたパピーパーティーは、私たちの知る範囲では、それまで日本で開催しているところは無かったと思います。

他の犬と出会う場所というとドッグランを選ぶ飼い主さんが多いのではないかと思います。しかし、初めて他の犬と触れ合う子犬をドッグランに連れて行くことは、とても危険なのです。トラブルに繋がったり、他の犬から追いかけまわされて他の犬への恐怖心が植え付けられてしまったりする恐れがあります。
一方、プレイボゥのパピーパーティーでは、それぞれの子犬の特徴を把握したドッグトレーナーの管理のもと、相性がよさそうな子犬同士を引き合わせます。信頼できるドッグトレーナーの監視下で初めて子犬を他の犬と触れ合わせることができるため、飼い主さんに安心して参加いただけます。プレイボゥのパピーパーティーで他の犬との接し方を学んでからドッグランに連れていくことで、子犬は正しいコミュニケーションを取ることができるのです。

Q.他の犬以外にも慣れておいた方が良いものはありますよね?

もちろんです。だからこそ当社のパピーパーティーでは、他の犬と接する機会を提供するだけでなく、人間・車の騒音といった様々な刺激に慣れるためのトレーニング(社会化のトレーニング)の必要性も解説しています。この「社会化のトレーニング」は人間社会で幸せに過ごす犬を増やすために常に重要なことなのですが、その重要性を飼い主さんに伝えることは、非常に難しいのです。

そもそも、子犬を迎えたばかりの飼い主さんには、ワクチン接種や蓄犬登録、避妊・去勢手術の検討など、考えなくてはならないことがたくさんあります。そのため、社会化のトレーニングまで頭が回らないことが多いのです。特に初めて犬を飼う方には、社会化のトレーニングの存在自体知らないという方が多いかもしれません。そのようなトレーニングの存在すら知らない方たちに、「社会化のトレーニング教室を開催します」とお伝えしたところで、興味を持ってもらえるはずがありませんよね。
そこで、そういった飼い主さんに興味を持って頂けるよう、「他の子犬と触れ合える」という部分を全面的に打ち出しました。さらに、「子犬のためになにかをする場所なのかな?」「なんだか楽しそうだな」というイメージを与えるために、「子犬のためのしつけ教室」ではなく、『パピーパーティー』と名付けることにしました。そのような工夫を重ねた結果、現在までに延べ800組以上の子犬と飼い主さんに参加いただいています。

Q. ミッションに「犬と一生一緒宣言」を掲げている理由を教えてください。

実は、社会課題となっている殺処分の背景には、飼育放棄をする飼い主の存在があります。調べたところ、飼育放棄の理由の多くは、犬のことを嫌いになって手放すのではなく、犬が飼い主の言うことをきかなくなり、吠える・噛みつくといった問題行動が手に負えなくなった、というものでした。犬にも個性はありますが、トレーニングができている子であれば、問題となる行動が出るのを防いだり、大きな問題にならないようコントロールすることができるのです。ちょこっと吠えたり、甘噛みしたり、といった犬の本能からくる行動に対して、不適切な接し方をすることで、犬の問題行動を助長してしまう場合があります。さらに間違った対応を取ってしまうと、犬の問題行動はどんどん悪化してしまう可能性があるのです。

そこで、プレイボゥでは子犬の社会化やしつけを通じて犬の問題行動を予防し、捨てられない犬と捨てない飼い主を増やしていきたいと考えています。当社のミッション「一生一緒宣言」には、「犬を迎えたらその子が亡くなるまで一緒に暮らすことが当たり前の社会にしたい」という想いが込められています。

Q. プレイボゥドッグトレーナーズアカデミーならではの特徴を教えてください。

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弊社スクールの特徴は二つあります。
一つは、トレーニングプログラムが犬にとって嫌な刺激を与えたりストレスを与えない優しい方法を推奨しているということです。プレイボゥのトレーニングは、犬の行動特性に基づいた理論がもとになっています。そのため、犬にとって負担が少なく、犬が理解しやすいトレーニングになっています。例えば、犬が人の左横を歩くようにするためのトレーニングでは、「どうすれば犬が人の横を歩きたくなるようになるか?」と犬の行動特性を踏まえて実施しています。犬の気持ち・行動を対象とした研究が進んでいる英国で創業者が学んだ理論をもとに、当社独自のプログラムを開発しております。

そしてもう一つの特徴は、トレーニング以外のプログラムも取り入れているということです。当社では、独立した受講生たちが集客に困らないよう、マーケティング講座やウェブ講座といった独立後の集客ノウハウも教えています。その結果、犬の保育園やしつけのお店は50店舗、店舗を持たずにプロのドッグトレーナーとして活躍する卒業生は200人おり、現在までに経済的な理由から店舗を畳んだ人はいません(2017年3月末時点)。「競業者を増やして問題ないのですか?」と聞かれることもありますが、当社としては大変嬉しいことなのです。というのも、プレイボゥだけで孤軍奮闘するより、しつけ教室や保育園を通じてプレイボゥの概念を飼い主に伝えることで、より多くの犬がしつけを受けられる状態にしたいと思っているからです。事業を通じて犬のトレーニングや犬の保育園をより身近な存在にしたいです。

Q.お二方は、海外の動物保護施設を見学されたことがあると伺っています。日本の保護施設と違う点を教えてください。

昨年末にロンドンの動物保護施設『Battersea dogs&cats home』(以下、バタシー)を見学してきました。バタシーは日本語で直訳すると「バタシー(という地方)にある犬と猫の家」という意味です。英国では、保護施設のことを避難場所という意味を持つ「シェルター」と呼ぶことはあまりないようです。呼び方の違いだけでなく保護施設自体にも、日本とは大きな違いが見られました。1頭ずつ個室が用意され、お部屋の中にはフカフカの毛布やキレイな布団を敷いたベッドがありました。

さらに、お部屋の前にはその子の名前や年齢が記されたプロフィールが貼ってありました。日本で一般的にイメージするような保健所の悲惨な様子とは全く異なるのです。そこはまさに「犬と猫の家」という名にふさわしい場所でした。のびのびと暮らしている犬たちの中に、あばら骨がくっきり見えるほど痩せているハウンド系の犬がいました。その子の部屋の前には貼り紙があって、こう書いてあるのです。

「私はここに来たばたかりで、とても痩せていますが、バタシーのチームが特別プランを作って体重を戻せるようにサポートしてくれています」

この表現からも、日本と英国での保護や譲渡に対する捉え方が全く異なることがわかります。多くの日本のシェルターでは、その子の「不幸な過去」に着目するため、里親=救助といったイメージが強いと思います。一方、このバタシーでは今は幸せな環境にいて、次の飼い主に出会う準備をしている事が伝わってきます。

Q.事業を通じてどのような社会にしたいとお考えですか。

犬を飼っている人もそうでない人も含めて、人間と犬が共存できる社会にしたいと考えています。
例えばロンドンの地下鉄では、犬をケージに入れずに電車を利用することが当たり前です。その光景に衝撃を受けてスマートに乗車する犬と飼い主を目で追っていたのは、日本人の私だけでした。乗客は全く気にしていない様子から、彼らにとっては「日常の風景」であることが伺えました。日本とヨーロッパには歴史的・文化的な違いがあるため、このような社会が日本で実現するには、乗り越える問題がまだまだたくさんあるでしょう。時間はかかっても、いつの日かこのように犬と飼い主が一緒に活動できる範囲が広がったらいいなと思っています。そのためには、マナーを守れていることが大前提です。プレイボゥのしつけ教室はそのための一つの手段です。事業を通じて捨てない飼い主、捨てられない犬を増やすだけでなく、犬と人が共存する社会を実現させていきたいと思っています。

 

株式会社プレイボゥ

法人名     :株式会社プレイボゥ

住所      :東京都目黒区目黒2-15-15 岡地ビル2F

設立年     :1995年

代表者     :代表取締役  森山 琴美

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