ペット可シェアハウスを通じた、静かなる社会貢献(前編)

2016年7月12日

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株式会社シーワン:


戸建注文住宅の建築設計・施工を中心に、リフォーム・リノベーション設計も手掛けている。2004年よりペットと暮らす家・HOUSE-ZOOを展開し、2010年にペット共生シェアハウスの壱番館を埼玉県の越谷市にオープンした。ペット共生シェアハウスは、同社が企画から設計、施工、運営に至るまで一貫して手掛ける。現在は建築中の建物を含めて関東近郊に11棟のシェアハウスを展開している。

徳田友美氏:株式会社シーワン 代表取締役(一級建築士・一級施工管理技士)
田中宗樹氏:HOUSE-ZOO株式会社 代表取締役(一般社団法人日本シェアハウス協会 理事)

動物のプロとの出会いが転機に

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広々とした部屋

ペット共生シェアハウスを始めた経緯を教えてください。

徳田氏:当社の始まりは、注文住宅の設計をしたいと28歳で起業をし、女性の設計士と2人で設計事務所を開設したことでした。10年ほど経ち、知り合いの紹介で、ペットショップの運営やタレント犬・猫の養成をするZOO JAPAN co;ltd.(以下「ズーさん」)の社長と出会いました。ズーさんから依頼を受けて渋谷にオフィスビルを設計したところ、「せっかく作ったのだから入居しなよ」と言っていただき、お言葉に甘えて私が設計したビルに事務所を移転しました。
私自身が動物好きなこともあり、それ以降はペットと暮らせる注文住宅を受注するようになりました。大手のハウスメーカーと競合することもありましたが、私が設計した渋谷のビルにお客さまをお連れすると、納得して当社を選んでいただくことが多かったです。恐らくズーさんの事務所には動物がいるので、ご自身とペットとの生活をイメージしやすいからでしょう。私は設計のプロですが、動物の習性を全て把握しているわけではありません。常に動物と一緒にいるズーさんが私たちの代わりにお客様さまの相談に乗ってくれることもあるので、とても恵まれた環境でした。
ペット共生型のシェアハウス事業は、自宅を新築して2010年に開始しました。当時、「シェアハウス」は一般的ではなかったものの、話題に上り始めた時期でしたので必ず流行ると見込んでのことです。また、ペットとの共生住宅を手掛けている会社としてペットと入居できるシェアハウスにはいずれ携わることになるだろうと思っていました。

ビジネスと自分の好きなことが交差して・・・

なぜ、ペットとのシェアハウスを提供されているのですか?

0191_index徳田氏:
ペットと暮らせる注文住宅の設計を通じて、ペットを飼う環境を実現することはハードルが高いと気づきました。ペットとの入居が可能な「ペット可物件」ではペットの飼育を認めているものの、諸手を挙げてペットを歓迎しているわけではありません。それらの物件では、家賃や初期費用がペット可でない場合と比べて高額であったり、種別や頭数を制限したりするケースが多いです。
当社が住宅市場で勝ち残っていくためには何かに特化する必要があります。動物のプロであるズーさんとの連携がウリの1つである当社は「ペット」に特化しようと決めました。一方、会社を更に成長させるためにはペットとの注文住宅だけでは不十分ですので、新たな収益基盤を作る必要があると思ったこともペットとのシェアハウスを展開するきっかけとなっています。商売としての展開と自分の好きな仕事が偶然にも重なったのです。

10年ぶりの再会で得た「仲間」

お2人はどういったご関係なのですか?

徳田氏:
私たちは従兄でして、私が田中のちょうど1回り上の年齢です。うちの家系は男性が多く、彼の妹を可愛がった記憶はありますが、残念ながら幼少期の彼との思い出はほとんど残っていません(笑)。その後、政治家の秘書をしていた田中から東京に上京するという連絡を受けて再会した時には、最後に会ってから10年以上経過していました。家を探していると聞き、最初につくったシェアハウス(壱番館)に空きがあったので入居を勧めました。その後、田中と話をする中で彼がこの分野に興味を抱いていることが分かりました。彼は建築のプロではありませんが、シェアハウスというカテゴリーの中で自分の強みを活かして会社を拡大させて欲しいと思います。

顧客視点へのこだわり

最初につくったシェアハウス(壱番館)は、ご自宅を兼ねているのですよね。

徳田氏:
私は、何事も自分で試してみて「いい!」と思ったものでないとお客さまに薦めたくありません。ですから、まずは自分の家で試してみようと設計して建ててみました。壁紙には、ペット専用ではありませんが、ペットが引っかいても傷つきにくい、固い素材を使いました。他にも、窓ガラスに塗布するエアープロットという「白金担持超光触媒コーティング剤」を使いました。エアープロットをいただいたときに、猫5匹と犬1匹を飼っている方の注文住宅の設計がちょうど重なりました。その方は、出窓がある部屋に猫部屋を作られました。最初は空気清浄機を2台使っていたようなのですが、さすがに猫5匹になるとどうしても匂いが消えなくて困るということでした。エアープロットにどれだけの効果があるのか分かりませんが試してみましょうということで猫部屋の窓だけ試してみたところ、お客さまが「全然違う」と驚かれていました。確かな効果を実感した上で、シェアハウスに製品の導入を決めました。

広々としたキッチン
広々としたキッチン

また、シェアハウスは今でこそたくさんありますが、当時は大手不動産会社ですらシェアハウスの広告を出していませんでした。初期の入居者は、ペットと暮らせるシェアハウスを探すのが大変だったようです。壱番館には中庭を作ったので、BBQを始めとしてシェアハウス内で様々なイベントを行っています。中庭ですと近隣に迷惑がかかりませんし、ペットが脱走する心配もありません。また、物件に合わせた設計を行っているので、一つとして同じデザインのシェアハウスはございません。建物を見た瞬間にデザインが思い浮かぶことが多いのですが、いざ建て始めると最初の図案に修正を加えたくなるので大工さんに怒られてしまうこともあります(笑)。

 

ペット共生シェアハウスにはペットに優しい素材を使っていると伺っております。

徳田氏:
例えば、床には店舗等で使われている塩化ビニル製のタイル(土足用)を使用しています。傷に強く、ワンちゃんが走り回ったり猫ちゃんが爪を立てたりしても大丈夫です。実は、ペットとの共生住宅を手掛けているうちに、様々なメーカーから「開発中の商材にアドバイスが欲しい」とご相談をいただくようになりました。商品のテスト期間を伺ってみるとたいてい3カ月、長くて半年ということでした。私には3カ月で商品の真価が分かるとは到底思えないので、ズーさんの事務所に設置して効果を検証することにしています。専門家のお墨付きをいただくことは大切ですが、365日動物と共にいる方の意見がお客さまにとって一番貴重なものだと思います。

0466_index 私自身、わざわざペット専用と謳った高価な商材を使用しなくても身近にあるものでペットに優しい環境はつくれると思い、最適だと思う商材を使ってペットと暮らす注文住宅を手掛けていました。ペット用の床1つとってみても、私達からすれば、もっと安くて丈夫な物がありますよと言いたいところなのですが、お客さまは高価でも「ペット用」と名のつくものを使いたいようですね。売り手と買い手の考え方の違いを悟った瞬間でした(笑)。

シェアハウスでペットとの快適な共生のために工夫している主な点は以下の通りです。

ペットとの共生で気になる点 工夫している点
臭い エアープロット、消臭壁紙、各室換気扇
騒音 各部屋の仕切りに防音を考慮し施工(ボード2重張り)
汚れ ポリ塩化ビニル製のタイル
洗い物 人用とペット用の洗濯機をそれぞれ設置

時代の変化に即した住まいの様式

ここ(撮影場所は西調布にある弐番館)は、個人宅をリフォームしたのですよね。
徳田氏:
家族経営のお寿司屋さんを買い取って、リフォームをしました。お話しを伺ったところ、来店数が減少したため規模を縮小して再出発したいということでした。今でも別の場所でお寿司屋さんを続けられていますよ。多くの家族経営のお寿司屋さんと同様、ここも自宅を兼ねたお寿司屋さんでした。広いスペースと土間を見た瞬間、犬が喜ぶだろうと思いました。完成した建物を見て、ズーさんのスタッフも社長も「これは面白い!」と言ってくださったことから手ごたえを感じました。

Before
Before(お寿司屋さん)
After
After(ペット共生シェアハウス)

前編は、ペット共生シェアハウス事業を始めた経緯を伺った。後編ではペット共生シェアハウスをしてお2人が実現したい世界観について伺う。
(後編はこちらから

 

 

法人名     :株式会社シーワン

住所      :東京都渋谷区南平台町3-5 JaZoo渋谷203

設立年日    :1990年

代表        :徳田 友美

事業内容    :

①建築設計・施工
戸建注文住宅が中心

②リノベーション事業
リフォーム・リノベーション設計施工。古い住宅・ビルをペット共生住宅等への改装を手がける

③シェアハウス事業
ペット共生シェアハウスの企画、設計、施工、運営

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