フェリシモ猫部長に聞いてみた「本当に猫は世界を救う」のか?

2016年1月15日

【修正2】

logo

株式会社フェリシモ
猫部長 松本竜平氏


フェリシモ猫部について:

2010年9月「社内部活動」の制度により、フェリシモの猫好き6人が集まって結成。ミッションは、ビジネスを通じて「猫と人がともにしあわせに暮らせる社会をつくる」こと。猫部で販売している商品価格の一部は猫のための基金(「フェリシモの猫基金」)として使われている。

「天性のセラピスト」に惹かれた社員たちによって、猫部は立ち上がった

猫部発足の背景について教えてください。

猫部が発足したのは、今から約5年前の2010年9月です。2010年に「社内部活動」と言って、水曜日の午前中は普段の業務から離れて好きなことをしても良いという社内ルールができました。女子DIY部やオーガニックコットン部など色々な部活動が立ちあがりましたが、私自身猫がとても好きなこともあり、猫好きな人を何人か集めて「猫部」を始めようという話をしました。もともと動物の殺処分の問題を何とかしたいという想いを持っている社員が少なからずいたこともあり、フェリシモが得意としているカタログ通販や雑貨作りを通じて、それらの商品価格の一部で動物愛護団体を支援しようというところから猫部の活動が始まりました。猫部が発足して最初に作った商品は、確か猫のモチーフが付いているネックストラップと、しっぽがついているポーチでしたね。

猫部の部員の方は普段どのような業務をされているのですか。

通常業務では、雑貨の企画担当をしている人が多いですね。猫部発足当時は6名だった部員も現在は約10名まで増えました。初めのうちは、週一回の活動だったのですが、徐々に人数も増え、本業になってきてしまいましたね(笑)。部員は猫アレルギーの人がいたり、猫を飼ったことのない人もいたりと様々です。猫を飼っていない人の方が多いのではないでしょうかね。ただ共通して言えることはみんな「猫が大好き」というところです。ですので、猫部に入るのも「猫愛」があればどなたでも入ることができますよ。

猫の魅力はどんなところにありますか。

pic2猫部では、猫は「天性のセラピスト」だと表現しています。

忙しい現代人にとって猫という存在はいるだけでとても癒されますし、猫を飼われていない方も写真とか動画とか見て癒されているという方はすごく多いと思います。猫部立上げの時に、猫部のコンセプトを「世界の猫を救う」としましたが、ときに「猫は世界を救う」と言うこともあります(笑)。

いるだけで癒される、そんな天性のセラピストである猫に囲まれたい、猫好きの方に楽しんでもらいたい、そして最終的には猫の役に立ちたいと思って日々活動しています。

猫想いな商品・サービスの裏にはいつも「猫好きの声」が

毎回ユニークな商品を開発されていますが、どういったところにこだわっていますか。

20151207085329
「あの猫に顔をうずめたみたい?モフモフおでこの香り ファブリックウォーター」

猫部はお客さまと一緒になって、猫好きの方が楽しんでいただけるような商品開発をしています。しかし、ただ人間が楽しければ良いという訳ではないので、猫が嫌がるような商品は決して作りませんね。

また、猫部で販売している商品価格の一部は猫のための基金(「フェリシモの猫基金」)として使われています。お客さまとのコミュニケーションは基本的にフェイスブックやツイッターなどのSNSを使ったアンケートを通じて行っています。最近では、猫の肉球の香りがするハンドクリームや猫のおでこの香りがするファブリックウォーターを販売しました。ファブリックウォーターの企画段階の時に「みにゃさまの愛猫の頭(耳と耳の間)はどんな香りがしますか?」というアンケートをSNS上で実施したところ、「うちの子のおでこはこんな香りでした」と愛猫の写真とともに多数メッセージが寄せられました。こうして寄せられたご意見を参考にして、今回の商品が誕生しました。

また、猫好きの方の多くは「猫になりたい」とおっしゃるんですよね(笑)。猫を飼えない方も猫感を味わえる、そういった願望を商品化したヘアターバンやルームウェアなどもお客さまから喜んでいただけていますね。

「フェリシモわんにゃん基金」の仕組み作りは、猫部発足時から考えていたものですか。

もともとフェリシモには、基金事務局というものがありまして、猫部発足以前から植林の活動を支援していたり、海外の途上国支援をしていたりと様々な形で基金活動をしていました。犬猫の保護活動を毎月1口100円から支援できる「フェリシモわんにゃん基金」を設立したのは2011年夏頃でしたが、基金をつくるきっかけとなった出来事は東日本大震災の時に様々な理由で残された犬猫たちでした。

原発の避難区域内に残された犬猫たちの中には、餓死してしまったり、飼い主が見つからなかったりと大変な状況だった犬猫もいたそうです。そんな時に「日本の愛護団体にもっと力があれば犬猫たちを助けられたかもしれない。フェリシモさん、もっと支援できませんか?」というようなお客さまのお声を多数いただきました。フェリシモには「フェリシモの森基金」というものが1990年からずっとありまして、毎月一口100円から国内外の植林活動を支援できるような仕組みがありました。「これと同じようにして犬猫の支援の基金ができませんか?」というお客さまからのお声をいただいて、「じゃあ、やりましょう」ということで「フェリシモわんにゃん基金」を始めました。基金つき猫グッズの購入(「フェリシモの猫基金」)や、毎月一口100円の「フェリシモわんにゃん基金」など、基金への参加の仕方は大きく4つありますが、すべて合わせて年間約4,000万円を超える基金額となっています。

支援をされている団体はどのくらいあるのですか。

支援団体は全国で50団体ほどあります。支援先となった団体には、基金事務局による年2回の審査があります。審査では、財務状況や活動状況を見ていますね。活動報告はすべてブログ上で公開しています。愛護団体も色々あるので資金集めや広報活動が非常に上手なところもありますし、一方なかなか上手く資金を集められない団体もあります。そこは活動状況に応じて公平に基金を分配するようにしています。

「世の中にとって価値のあることをしたい」フェリシモの事業は社会的価値も追う

フェリシモさんは、「事業性」「独創性」「社会性」の3つを大事にされていると伺ったのですが、それは猫部でも同じことが言えるのでしょうか。

その通りです。フェリシモでは新卒採用の時に必ずこの3つの話を聞かされます。その話に共感した方だけがフェリシモの採用を受けると思いますし、面接時でもそれに共感していることが伝わらないと採用してもらえないと思います。ですので、基本的にはフェリシモで働いている方はみんなただ利益を出せば良いという訳ではなく、世の中にとって価値のあることをしたいと思っていますし、独創的なことをしたいと思っているはずですね。猫部でもこの理念は当たり前のようにあり、ただ単に「かわいい」「売れる」という商品を作るのではなく、オリジナリティを大切にして、人も猫もしあわせになれるような事業をしていきたいと思っています。

社会貢献活動と事業が一体となっていてとても素敵ですね。

フェリシモには「CSR部」「CSR担当」というものはありません。すべての事業の領域において「事業性」「独創性」「社会性」が交わるところを重視しています。まずは会社ですので事業性がないと続きませんし、なおかつ社会に負担をかけない、できればプラスになることする。そしてフェリシモ独自の価値観やオリジナリティの形態でやりながら、それを実現していこうということですね。つまり、CSRや社会貢献を会社の事業と切り離して行うのではなく、経済的な価値や社会的な価値を同時に自分たちの領域の中で実現していきたいと思っています。

人も猫もしあわせになる社会を目指して

フェリシモさんの今後の目標を教えてください。また、そのために何かされていることを教えてください。

pic3猫部では、「猫と人がともにしあわせに暮らせる社会をつくる」というのをミッションにしています。そのために、まずは猫の殺処分数を0にしたいと思っています。まだ日本の殺処分数は、猫で9万9千頭、犬2万5千頭と言われており、特に猫の殺処分数は犬の3倍近くに上ります。

猫の殺処分は多い理由の一つとして、野良猫が多いことがあげられます。殺処分される猫の大半が仔猫だと言われていていることもあり、これ以上望まれない仔猫を増やさないようにTNR活動にも積極的に支援しています。実際にTNRの様子を現場で見させていただいたこともあります。やはり、実際に見てみないと分からないこともありますからね。

また、支援させていただいている団体から、「譲渡会を開催する場所がない」とのお声をいただき、2ヵ月に1回オフィスで保護猫の譲渡会を開いています。これまでに18回開催し、毎回200名前後の来場者があります。これまで約200匹以上の譲渡が成立し、新しい家族のもとに引き取られていきました。

※TNRとは、野良猫を捕獲(Trap)し、避妊・去勢(Neuter)手術をし、元の場所に戻す(Return/Release)ことです。

最後になりますが、猫部の事業を通じて、松本様はどんな社会にしていきたいですか。

企業が動物愛護への支援を当たり前のように行える社会にしたいですね。当社は通販会社なのでペットとはあまり関係がないと思われていて、「何故ペットの愛護に取り組まれているのですか?」というお声をいただくことがあります。しかし、近年ではペットを家族の一員として一緒に生活されている方はすごく増えていますし、暮らしの1テーマとしてペットという領域が普通にある時代だと思うんですよね。植林の活動に支援する、水をきれいにする、といったことと同じように企業が動物愛護の領域に対して支援していくことがもっと一般的になれば良いと思います。猫部が販売した猫グッズによって、人も猫もしあわせになる、そんな社会を目指しています。

 

【関連ページ】

統計データから紐解く「殺処分」の現状・課題・解決策
殺処分の現状について統計データを交えながら考察し、この社会問題の課題提起とその解決を図る先端事例の紹介を行っています。

 

株式会社フェリシモ概要

FELISSIMO_logo02

社名:株式会社フェリシモ

本社所在地: 〒650-0035 神戸市中央区浪花町59番地

創立: 1965年5月(現・株式会社フェリシモは2002年8月に分割設立)

代表者 代表取締役社長 矢崎和彦

連結従業員数 905名(2015年2月28日現在)

事業内容 ダイレクトマーケティング事業

 

ページトップボタン