寄付のマッチングでアニマル・ドネーションが果たす役割

2015年10月7日

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アニマルドネーション


公益社団法人アニマル・ドネーション
代表理事・マネジメントディレクター 西平衣里氏

1969年、福岡県生まれ。大学卒業後、株式会社リクルートに就職。中途採用情報誌や結婚情報誌『ゼクシィ』の創刊に携わる。その後、ゼクシィ・ブランドのムック版『海外ウエディング』『インテリア』『ドレス』に編集制作、クリエイティブディレクターとして携わる。’03年にリクルートを退社。ヘアサロンを経営する傍ら、10年に一般社団法人『アニマル・ドネーション』を設立。11年7月より、動物愛護関連のオンライン寄付サイトをオープン。15年4月に公益社団法人を取得。13年8月より、売上の一部を動物愛護のための寄付に役立てるセレクトショップ『INUTO』(http://inuto.jp/)のプロデューサーも務める。

支援希望者と愛護団体との橋渡しをするのがアニドネの役割

まず始めにアニマル・ドネーションの寄付の仕組みについて教えてください。

アニマル・ドネーションは、「寄付したい人」と「支援を必要としている団体」を結びつける仕組みを持っています。
寄付の仕方が大きく2通りあることがアニマル・ドネーションの特徴です。

1つ目は、「選んで寄付」というアニマル・ドネーションのメンバーが団体の方と直接お会いして情報収集をし、独自で定めた「掲載基準」に基づいて選定した団体の中から、支援したい団体を決める方法です。

選んで寄付
選んで寄付(HPより)

 

2つ目は、「まとめて寄付」という寄付先の団体を指定せず、アニマル・ドネーションに一括で寄付をすることで全寄付先団体を支援するという方法です。こちらは、「寄付したいけど、たくさんある中から寄付する団体を選ぶことが難しい」という方に好評です。また企業からの寄付の際にも、こちらの方法を使われる場合が多いです。

まとめて寄付
まとめて寄付(HPより)

愛護センターで目にしたのは、心がちぎれるような現実

この仕組みを考えるに至った経験はありますか?

きっかけは、ある企業のワークショップで愛護センターに行った時に、きれいなキジトラ猫に遭ったことです。一見して大切に育てられていたことが分かるほど毛並みがつやつやで、長い尻尾が美しい成猫でした。

私には健康面も精神面も問題なく見えたので、愛護センターの職員の方に「この猫は、どうしてここにいるんですか?」と聞いたところ、「今日入院するおじいちゃんが連れて来たのです」と仰いました。気になって、「この子はどうなるのでしょうか?」と尋ねたところ、申し訳なさそうに「この子は成猫なので引き取り手を探すのは難しいかもしれません。もしかしたら処分になるかもしれません」と。

その言葉を聞いた瞬間に、キジトラ猫がゲージ越しに私にすり寄ってきました。
状態のよい猫から、連れて来たおじいちゃんの哀しみを容易に想像できたので、「あぁ、この子は処分されてしまうのか」と衝撃を受けました。

それまでは、いい加減な人たちが愛護センターに捨てに来るのだと思っていましたが、ペットだけでなく人間も悲しい思いをしている場合があると分かったのです。
当時、メディアで独居老人といった社会問題が取り上げられていたことも重なり、人間とペットの両方を救う仕組みを作りたいと思い始めました。

それからすぐに、現在の仕組みを作ろうとされたのですか?

まずは、自分のできることを探すために、1年くらいかけて約70人の業界関係者に会いました。

ペットを救う活動をしている方々が多くいることを知りましたが、資金が足りておらず、労力も資金も持ち出しで活動されている状況でした。
一頭あたり、猫なら3万円、犬なら4-5万円あれば救うことができます。
ボランティアの方々が犬や猫を保護する現場に立ち会いましたが「お金がないからこの子を置いていく」といった心がちぎれるような活動をしておられました。

私は前職で情報サイトをつくり、ユーザーのニーズと業界を結びつけるような経験をしていたので、まずは動物の情報がたくさん集まるプラットホームをつくろうと思いました。
私のように、自分で保護活動はできないけれど、活動する方々に寄付をしたいという人と団体を結び付けるサイトにすれば、多くのペットを救えるのではないか、と思案しアニマル・ドネーションの仕組みを考えました。

顧客視点を大切にするために、業界関係者と闘った結果は・・・

西平さんは、今までどのようなお仕事をされてきたのですか?

新卒で株式会社リクルートに入社し、中途採用事業部、クリエイティブ担当としてゼクシィの創刊に携わりました。

新しいモノをつくるのが好きなので、ゼクシイでの仕事はとても楽しかったことを覚えています。私は「仕組みを考える」ことが大好きで、今でも道を歩いている時に思い浮かんだアイディアを家に帰って形にすることがよくあります。

実はゼクシィ立ち上げ時のリサーチ段階で、当時のウエディング業界は、顧客ニーズとは異なる価格設定をしていることに気がつきました。そのような業界でゼクシィを作った理由は、ユーザーが欲しいサービスを適切な価格で提供する業界にするためです。

私たちの取り組みに既存の業界関係者からは、「なんでリクルートさんにそんなこと言われなきゃいけないんだ」と反発されたこともありましたが、「顧客目線を大切にしたい」という信念のもと、時にウエディング業界と闘ったこともあります。

それを続けた結果、ユーザーのニーズと業界が組み合わさって良い商品が生まれ、業界が発展しました。「ゲストハウス」や「自毛結い和装」というような新しい概念はゼクシィが主導となって作ったのですよ。

そもそも、西平さんは何がやりたくてリクルートに入社されたのですか。

私はバブルの後半に短期大学生でした。もともと雑誌が好きでしたので、就職活動期には編集、制作や広告分野を中心に見ていました。しかし、その時代に短大卒で広告系の採用をしてくれる会社は、リクルートくらいしかありませんでした。

大阪で中途採用事業部に採用され、「B-ing」や女性向けの就職情報誌の先駆けである「とらばーゆ」という媒体に携わっていました。仕事柄、毎月締め切りに追われるものですから、夜中まで働いた後に同僚と食事をし、朝から取材に行くような日々を送っていました。

退職して気がついたことは、空の青さを楽しむ心の余裕

リクルートでバリバリ働いていた西平さんがペット業界に携わろうと思った経緯を教えてください。

私は34歳で会社を辞めてヘアサロンの経営者になったことで、企業勤めでは難しかった、ペットと暮らすという夢をかなえることができました。実家では猫を飼っていましたが、主人が猫アレルギーのため、毛の抜けないトイプードルのブリーダーを半年かけて探し、一緒に暮らし始めました。

犬の散歩に行くと、公園に1時間いるような方がたくさんいらっしゃいます。かつて馬車馬のように働いていた私にとって、その光景は衝撃的なものでした。最初は「何か生産的なことをやればいいのに」とフラストレーションを感じていましたが、人との繋がりや「今日の空ってきれい」と思える心の余裕がないと、偏った人になってしまうことに気がつきました。

それを機に、「人生80年と考えると、残された時間をどう生きるべきか」と自分の身の振り方を考え始めました。独居老人や育児放棄、殺処分問題を見聞きするうちに、大好きなペットのために自分が培ったスキルやネットワークを活かしたいと思うようになりました。

ペットを飼えなくても殺処分ゼロの力になれる手段

西平さんのモチベーションの源は大好きなペットにあるのですね。
それでは実際にどのような方がアニマル・ドネーションのサイトを通じて寄付をされるのですか?

西平様お写真38割は寄付によって動物業界をよくしたいと考える企業に支えられています。また、企業側からみると中間支援組織であるアニマル・ドネーションとコラボレーションしての寄付は企画立案がしやすく、寄付の流れも明確なので好評をいただいています。
残りの2割は個人の方からの寄付です。日本の現状をよくご存知で、問題を解決したい、としっかりとした考えを持った方が多くおられます。

寄付した後に、コメントを書き込めるフォームになっているのですが、そのコメントから寄付をされた方の熱い思いが伝わってきます。

例えば、「罪の無い動物が殺処分されている事に以前から心が痛んでいた。それと同時に、何も出来ない自分にも嫌気をさしていたが、寄付をすることで立てたら嬉しいと思った」という理由で寄付をされる方は多くいらっしゃいます。

他には、「愛犬が亡くなって、自分ではもう犬が飼えないけれど、犬や猫や動物は大好き。自分にできる範囲で役に立ちたいと思った」という声を頂いています。

また、アニマル・ドネーションは聴導犬、盲導犬、介助犬といった補助犬を育成されている団体への寄付も対象としています。補助犬を見かけた方からは、「盲導犬を通勤途中にたまに見かけることがあるが、電車や人混みの中でもおとなしくて本当に偉いなといつも関心している。目の不自由な方の目となるような補助犬をもっと増やしてほしい」といったご意見も頂いています。

ペットを飼っていない方が多いことは意外でした。時間や住居環境の理由から飼える状況にないが寄付はしたい、という方が多いです。アニマル・ドネーションを始めてからは、数値目標を達成する喜びとは別の、純粋に人の役に立って「ありがとう」と言われる喜びを知りました。

実は、メンバー全員が二枚目の名刺

アニマル・ドネーションのメンバーにはどのような方がいらっしゃるのですか?

実は、専任のスタッフは置いておらず、全員が「二枚目の名刺」なのですよ。
専門性が高いだけでなく、ペットに対して熱い気持ちを持つメンバーです。

2015年4月に公益社団法人を取得したので、ここ数年は基盤を作る時期だと考えています。維持することは大変だと言われていますが、公益社団法人を取った以上は、少なくとも100年続くようにしなければならないと思っています。

また、「犬猫のために何かしたい」という人が集まれるような、クラブアニドネというボランティア組織を立ち上げました。ホームページに募集の掲載をしてみたところ、10人くらいから応募がありました。みなさん、犬猫が大好きなことはもちろんのこと、社会貢献をしたいという熱意が高い方々ばかりです。

一人でなにかを立ち上げることは大変ですが、想いに賛同してくれる方々がいるからこそ活動ができています。日本の動物たちをなんとかしたい、と想う方々との出会いは私に与えられたギフトです。

今必要なのは、「正しい」情報の流布

西平さんがペット業界で成し遂げたい夢は何ですか?

まず、インフラ的にこういうところも(取材場所はカフェ)普通に犬猫が入れたり、気軽に公共交通機関を利用できるようになることで、ペットと人との真の共生を実現したいと思っています。

今、こういった考えを持つ人たちは、「熱狂的な動物愛護活動家」で偏った人だと見られがちなのですよね。
とはいうものの、犬猫は人間が自然から切り離し、品種も人間の都合で増やしたので、他の動物と少し位置づけが異なると思います。しかし、一緒にいることで癒されますし、共に生きるべきだと思うのですよ。

将来的には動物に関する研究機関を持ちたいと考えていますし、動物が人間にもたらす効用がいかに素晴らしいかということを皆に知って欲しいのです。犬と一緒に育てた赤ちゃんは、ノンバーバルコミュニケーション(非言語コミュニケーション)に長けるというアメリカのデータがあります。

私の出産当時、愛犬は7歳でした。元気で明るいトイプードルでしたが、子供が来たことで自分の居場所をなくしてしまったと思ったようで、血便が出てうつ病のようになってしまいました。今ではすっかり子供とも仲良しなのですが、子供といる部屋に入ってこない時期がありました。

また、犬と子供が一緒にいるのを見ているうちに、子供を叱るのがとても上手な犬だと分かりました。子供が乱暴な動きをしようなら、「うぅ!」と圧力をかけるんです。それだけで、怒られたことが子供に伝わります。
人が口で教えるより動物が雰囲気や威圧感で教えることが役立つと思います。

正しい情報が流布することによって、ペットを飼っている人も飼っていない人も「動物と共生できる社会」にすることをやり遂げたいと思っています。私が死ぬまでに、犬猫が「日本でペットとして暮らせてよかった」と思えるくらい動物福祉レベルの高い国にしたいと思っています。

アニマル・ドネーションの法人概要


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アニマル・ドネーションは、「人」と「動物」の真の意味での「共生」を目指します。

3つの柱を軸に、寄付を通じ、人も動物も幸せな先進国家に向け活動していきます。

1.動物のためのオンライン寄付サイトを通じ寄付文化の構築

補助犬育成(盲導犬・聴導犬・介助犬などの補助犬)、動物愛護(啓発活動など)、動物保護
(殺処分動物の保護活動団体)の動物に関係するNPOやボランティア団体の情報収集を行い、
サイト上に公開いたします。一般の方や企業より寄付をオンラインにて募ります。
また、寄付金の使途目的・詳細等がわかる活動レポートを作成し、寄付者と動物関連団体の双方が
共にハッピーな寄付文化形成を目指します。

2.動物関連団体へのサポート活動

動物関連団体への活動支援や情報共有、コンサルティング、勉強会運営、印刷物発行などを行います。
個別に活動する団体が持つ優れた手法や成功事例をナレッジ化する活動を行うことで、業界全体の
速やかなボトムアップを図ります。
社会を変える為に、団体同士の協力連携は不可欠だと考え横軸をつなぐポータル情報サイトとしての
役割を果たします。

3.人と動物の真の共生を目指す活動

動物に関連する課題・問題はあくまで人の社会全体の一環であると捉え、人と動物が真に共存する
ために活動します。
人にも動物にも負担が少なく、より調和し発展していくための、情報収集や学術研究、教育業務、
啓発事業を行います。
全方位的に人と動物の関係を見つめることにより、社会全体の福祉の向上を図ります。

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