「ペット可賃貸」の現状について

2016年6月8日

サマリー

  • 東京23区内において「ペット可」な賃貸住宅は全物件の約12%程度を占めている
  • 「ペット可」の賃貸住宅が少ない理由として、ペットが原因によって引き起こされるトラブルをオーナーが危惧している
  • 「ペット可」の賃貸住宅は、通常の賃貸物件を「ペット可」に条件緩和したものだが、「ペット共生型物件」「ペット同居型マンション」は入居者がペットと暮らすことを前提に設計された物件のことを指す
  • 賃貸物件を「ペット可」にすることはオーナーにとっても大きなメリットとなり、空き家を減らすことに繋がる

 

「ペット可」の賃貸住宅は全物件の約12%

「ペット可」の賃貸住宅とは、ペットの飼育が許可されている物件のことを指す。これらの物件は、ペット不可のものと比べて極端に数が少なくなっている。「ペット可」物件の数は㈱ネクストの不動産・住宅情報サイト「HOME’S」に掲載されている東京23区内の賃貸物件(2016年5月27日時点)は11万6,082件となっている。しかし、ペット可物件は1万3,848件と全物件の12%程度となっている(マンション、アパートに限る)。立地や家賃、間取りといった基本的な条件を加えた場合、数はさらに少なくなる。

「ペット可」物件の割合が最も高いのは港区の24.9%

「HOME’S」での検索結果によると、東京23区において全物件数に占める「ペット可」の物件数の割合が最も高いのは24.9%の「港区」となっている(マンション・アパートのみ)。ちなみに、「ペット可」の物件数が最も多いのは「世田谷区」となっている。反対に、「ペット可」の物件数の割合が最も低いのは8%の「江戸川区」となり、同物件数が最も少ないのは「千代田区」となっている。「ペット可」物件の探しやすい地区を狙って物件探しをするのも有効な手立てだろう。

【東京23区内のペット可物件数】

 

PEDGEグラフ

「ペット可」の賃貸住宅が少ない理由

「ペット可」の賃貸住宅が少ない理由として、オーナーが入居中や退去時のトラブルを危惧していることが考えられる。ペットの臭いや鳴き声などが住民同士のトラブル発生の原因になりやすいようだ。また、室内飼育による壁や床へのキズ、ペットの臭い、ペット嫌いや動物アレルギーを持っている入居者への配慮を考慮した結果、ペット可の選択肢を取るオーナーは必然的に少なくなる。

ペットオーナーに立ちはだかる壁

さらに飼い主を悩ますのが初期費用だ。一般的にペット可物件の初期費用がそれ以外の物件と比べて高額な傾向にあるのは、退去時の原状回復費用が通常よりも多くかかるからだ。また、「ペット不可賃貸」を選択する入居者の多くは前の入居者がペットを飼育していないことを前提に選んでいる場合が多いことも挙げられる。オーナーにとっては、ペット可よりもペット不可にしておく方が需要を満たす部分が大きいのだろう。

ただでさえペット飼育可物件が少ないのに、猫は飼育不可だという物件も多い。理由として、猫は壁やふすまを爪でボロボロにすることや、トイレが臭うことなどが挙げられる。一方、壁紙やふすまは取り替えればすむため猫を飼う際は修繕費を多くとれば良いし、猫のトイレには消臭効果のある猫砂を使い、こまめに掃除や換気をすれば臭うことはない。また、元来猫はきれい好きで、決められた場所以外でトイレをしない。このように、いくらでも対策はあるのにオーナーが猫の習性や飼育に関して誤解をしている点にあるようだ(東京キャットガーディアン山本氏の記事を引用)

東京23区内でペット可物件を探すコツに関しては、「東京23区で『ペット可マンション』『ペット可賃貸』を探すコツと注意するポイント5つ」をご覧ください。

「ペット可」と「ペット共生型物件」「ペット同居型マンション」の違い

いわゆるペット可物件のほとんどは通常の賃貸物件を「ペット可」に条件緩和したもの。契約上ペットの飼育は許されているものの、多くの物件はペットと暮らすことを想定して建てられたわけではない。一方、「ペット共生型物件」や「ペット同居型マンション」はペットと暮らすことを前提に設計されている。例えば共有部分にドッグランやペット用の足洗い場、各玄関にリードフックがあるなど、ペットと飼い主が生活しやすいための設備が整えられている。また、鳴き声や足音が響かないための窓、壁、床の防音設計や、ペットが足腰を傷めないようなクッションフロアなど、室内もペット向けの対策がなされている。ペットを飼うことを前提としているので、入居者間でペットに対する共通理解があり、入居者もペットもより安心して暮らすことができる。

「ペット可」によってオーナーが受けるメリット

総務省統計局の『平成25年住宅・土地調査 特別集計』によると、平成25年の全国の空き家率は13.5%に達している。首都圏の順位は、東京都42位となっているものの、空き家率は11.1%となっている。空き家の増加は、景観の悪化や近隣への悪影響、犯罪の増加といった社会問題に解決に繋がる恐れがある。オーナーにとって「ペット可」の選択肢を取ることは、自身の物件の空室率を低下させるだけでなく、社会課題となっている空き家を減らすことにも繋がるだろう。