タートルタクシーでお馴染、三和交通の新境地「ペットタクシー」

2016年12月20日

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三和交通株式会社
代表取締役社長 吉川 永一氏


神奈川、東京、埼玉を中心にタクシー事業を展開している。代表取締役の吉川氏は、3代目を務める。2016年10月より、ウェブサイトから事前に必要な情報を登録することで犬・猫・小動物等と快適に乗車できるサービス「PET TAXI」の運行を開始した。「PET 119番」にも対応し、予め動物病院を登録することで配車時にスムーズに送迎することが可能となっている。同社は他にも季節に応じて「Valentine’s Taxi」や「Sanwa Claus Taxi」、「心霊スポット巡礼ツアー」を運行している。
また、顧客の希望に合わせて通常よりも速度を落として運転する「タートルタクシー」は、「2014年度グッドデザイン賞&グッドデザイン・ベスト100」を受賞した。

「PET TAXI」開発のヒントとなったのは、あのサービス

サービスを開始されてから1カ月ほど経過します。お客様からの反響はいかがですか?

ご利用の前日までにペットの種類や緊急連絡先等を登録いただく必要があるのですが、お陰さまで200件ほど登録いただいております。北海道や関西といったエリア外からの登録を除くと100件弱となりますが、このサービスへの強い関心の表れだと捉えています。登録されているペットの種別ですと、トイ・プードルやミニチュア・ダックスフンドといった小型犬が多い印象です。この事前登録のヒントとなっているサービスが、当社の「陣痛119番」という取組みです。「陣痛時に利用してもいいですか?」といった声を妊婦さんからいただくことが多かったので、かかりつけ病院や緊急連絡先を予め登録する専用フォームを作成することにしました。その結果、3年間で4万件弱もの登録がありました。
登録された方の3人に1人の割合で利用いただき、今までに3回ほど車内で出産がありました。次の日の朝、お父様が「無事に元気な子が生まれました!」と営業所まで報告にいらしてくださり、皆で拍手をして祝福したこともあります。

「PET TAXI」が誕生したきっかけは、1件の問い合わせ

「PET TAXI」が生まれた背景を教えてください。

このようなサービスが始まる前から、盲導犬や介助犬はもちろん、ペットと一緒に乗車いただくことは可能でしたが、公表はしていませんでした。そんな中、今年4月に弊社と名前の似た北陸のタクシー会社が盲導犬の乗車を拒否したという事件がニュースになりました。その際、名前を混同されたお客様からクレームを1件いただいたのです。念のため当社の応対状況を確認したところ、1日10回ほどペット同伴の可否に関するお問合せをいただいき、そのたびに「どうぞご乗車ください」とお答えしておりました。
その出来事をきっかけに、今までもお断りしていないのであれば、ペットとの乗車を歓迎していることを示した方がいいのではないかということで、このサービスを開発することになりました。

ペットタクシーの画面
ペットタクシーの画面

「PET TAXI」を開発するにあたり、苦労した点や工夫した点を教えてください

社内でもペットを飼っている人が多いことや、サービス提供以前からペット同伴で乗車されるお客様をお迎えしていたことから、サービス内容の面で苦労した点はありません。私自身、多い時はトイ・プードルを4頭飼っていましたし、1人暮らしでペットを飼っている若い乗務社員もいるので、ペットへの理解やユーザー目線はあると思います。「PET TAXI」のweb画面に使用されているスタンダード・プードルは、弊社役員のペットなのですよ。一方、ペットの呼び方には、議論を重ねました。「タロウ」というペットをタクシーに乗せる場合、「タロウ君」なのか「タロウ様」なのか。乗車いただくので、最終的には「様」をつけることで合意しました。また、「ペットだけをお預かりして輸送する」ケースは慎重に検討しました。旅客運送業の観点からすると、ペットは物品という扱いになります。「動物愛護管理法によると、ペットを預かった輸送は『保管』に相当するため、必要な手続きを踏んでいるのですか?」という問合せを受けたのですが、環境省に問合せた結果、目的が輸送であるため特に必要ないようです。

ペットに優しいデザインは、高齢者や障害者にも優しい

全車両が「PET TAXI」に対応しているのですか?

全車両がこのサービスに対応していますが、ケージを載せやすいユニバーサルデザインの車両も用意しています。つかまりやすい手すりや車椅子のまま乗車できるくらい空間に余裕があるので、ペットだけでなく高齢者や障害者にも優しいデザインとなっています。そのような車両は今のところ5台ほどですが、随時切り替えていきますので、最終的にはほぼ対応可能です。

グッドデザイン賞を受賞!嬉しい影響は意外なところに・・・

「PET TAXI」以外にも様々な取り組みをされていると伺っています。

例えば、スピードを落として運転して欲しい時に「ゆっくりボタン」を押すと、通常よりもゆっくりと運転をする「タートルタクシー」というものがあります。当社のアンケートで、「揺れるのは嫌だ」「タクシーの中で仕事したい」「体調が悪い」など、もっとゆっくり走って欲しいと思ったことがある、という方が76%いらっしゃいました。しかも、そのうち「乗務社員に要望を伝えづらい」という方が9割以上でした。それならば、座席の後部にボタンを設置することで意思表示ができるようにしようと考えました。速度を落とすことは事故防止にも繋がりますので、社内に提案した時は、諸手を挙げて賛成という状態でした。
タートルタクシーは、「2014年度グッドデザイン賞&グッドデザイン・ベスト100」を受賞しました。当社は中小企業ですので、採用力を高めるためにもタイトルホルダーになろうと決めて取りに行きました。その結果、新卒採用に良い影響が生まれました。1996年の新卒採用の開始当時は5~6人でしたが、ここ数年は多い時には20人以上が入社するようになりました。

ITを通じて社員からの信頼を獲得

吉川さんは3代目の社長と伺っています。もともと、家業を継ぐことは意識されていたのですか?

大学でクリエイティブ制作を学んだ後、PVや映画を作る仕事をしていました。「家業を継ぐ」ことはあまり意識していませんでしたが、26歳の時に家族から呼び戻されて入社することになりました。当時、PCは各営業所に1台のみで、稟議書や報告書も紙で出力して1つずつ印鑑を押すような状態でした。社内システムを作って、1営業所ずつPCの使い方を教えて回ることに決めました。周りはPCなど触ったことのない親世代の方がほとんどでしたが、「ITに詳しい吉川さん」と最年少の私を社内で認めてもらうことができました。メールの受信設定だけのために、横浜から八王子まで行ったこともありました笑。その結果、皆のスキルが上がりましたし、書類を送るコストも削減されました。
信頼関係を築いたお陰か、今ではFacebookのメッセージを通じて業務改善の提案を社員から受けることがあります。

「接客の質を上げたい!」ヒントを得たのは、異業種から

吉川さんが29歳で社長に就任された時、どのような点を変えられたのですか?
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まずは社是や社訓を見直しました。それらしきものはあったものの、営業所によって文言が異なるなどまとまっていませんでしたし、社内の目線合わせもできていない状態でした。お客様への対応に迷った時の拠り所と何のために仕事をしているのかということを明確にしたいという思いから、一番に着手しました。もちろん「お金を稼ぐために働く」というのは、モチベーションにあると思いますが、その先の部分まで考え抜かれていると、お客様にとって付加価値の高いサービスを提供できると思います。「地域で一番優しいタクシー会社になろう」という理念を浸透させるために、入社時の研修、3カ月、2年目に同じ内容の研修を実施しています。

他には細かいマニュアルを定めて年間2,000回に渡るモニタリングを実施しています。お客様を装って調査をする覆面モニターを導入し、「自己紹介の有無」や「シートベルト着用のお願い」、「忘れ物の注意喚起」等、全15の評価項目に沿って採点してもらいます。この調査は20年ほど前から導入しているのですが、当時のタクシー業界には「顧客サービス」への意識が高くなかったため、異業種である百貨店のアンケートからヒントを得ました。今では、当社の教育体制に興味を持っていただいた同業他社の方がよく見学にいらっしゃいますよ。

三和交通ならではの特色を教えてください。

乗務社員の熟練度合いに応じたシール
乗務社員の熟練度合いに応じたシール

例えば全1,400人いる乗務社員の中には語学が堪能な方がいます。外国人観光客が多い「横浜ツアー」もご用意しており、英語・中国語・フランス語・韓国語でのご案内が可能です。
他には、新人の場合は、一目見て分かるように「新人ドライバー」のシールを貼っています。このマークがあると、不慣れな道でも「教えてあげるよ」と優しく接してくれるお客様が増えるようです。来年からは「熟練」と「達人」を追加する予定です。この熟練度合いは、年齢や勤続年数によるものではなく、道を熟知しているか、お客様に満足のゆく対応ができているかといった観点から分けています。乗務社員には達人レベルを目指して頑張って欲しいと思いますし、達人レベルの人には「達人なのだ」という誇りを持って業務に臨んでほしい。ステータスを設けた背景には、今後、労働人口が減っていく中でも長く働く人を増やしたいという思いがあります。

「地域で一番優しいタクシー会社になろう」三和交通が目指す真の社会貢献

会社として大切にされていることを教えてください。

「仕事を通じて社会貢献をしたい」という考え方を一番大切にしています。
出会ったお客さまが不機嫌な状態だというのは、乗務社員にとってよくある出来事です。
ある日、そのようなお客様に出会った乗務社員が、気持ちの込もったおもてなしをし、最後にドアサービスをして「ありがとうございました」と頭を下げたところ、お客様がふっと振り返ったようなのですよ。嫌味と捉えられて殴られる覚悟をしたそうなのですが、お客様が千円札を出して「会社を出る時に上司と言い争いをして嫌な気持ちだったが、丁寧な対応をされて恥ずかしかった、申し訳ない」と仰いました。

その乗務社員は、「負の連鎖を断ち切ることができた」と喜んでいました。自分が気持ちを抑えられないままサービスをしていたら、その方は外出先で失敗をしてしまっていたかもしれませんし、次のお客様に八つ当たりでもしたら、負の連鎖は広がっていたかもしれません。毎回は難しいかもしれませんが、お客様の心の在り方に少しでも良い影響を与えることができると、30年後には、「三和交通のあるエリアは犯罪率が0.01%低い。他のエリアよりも笑顔が多い。」という風になっているかもしれません。これは、タクシーの乗務社員にしかできない社会形成の在り方でしょう。
だからこそ、今回の「PET TAXI」も今までやっていたことを横展開したという感覚に近く、乗務社員にとっても、自然なことだと思います。これからも、仕事が社会貢献そのものに繋がっているという意識を持ち続けながら様々なことに挑戦していくつもりです。

三和交通株式会社の会社概要

法人名     :三和交通株式会社

住所      :横浜市港北区鳥山町480

設立年     :1965年

代表       :代表取締役社長 吉川 永一

主な事業内容  :一般乗用旅客自動車運送事業(ハイヤー・タクシー)

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