『ゼクシィ』のディレクターが開発!今までにない獣医師診療とは

2016年8月23日

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PET’S  ALL RIGHT:


飼っているペットの病気や気になる症状をオンラインで獣医師に相談できるサービス。2016年7月に正式リリースを発表した。開発者である小早川斉氏は、結婚準備総合サイト『ゼクシィ』にてディレクターを務めている傍ら、愛犬とのある出来ごとをきっかけにリクルートの新規事業開発プログラム『Recruit Ventures』にて『PET’S ALL RIGHT』を起案した。

ペットの症状に応じた病院選択を可能に!いつでも獣医師に相談できるPET’S ALL RIGHTとは?

PET’S ALL RIGHTのサービス内容について詳しく教えてください。

ペットの気になる症状を、動画を活用して獣医師に相談することができるサービスです。サービスを利用する際、データベースでやっていただくことは2つあります。まずは「くしゃみ」や「震え」、「元気がない」等、飼い主さまが気になるペットの症状をスマートフォン等で動画撮影をしていただきます。この動画のことを私たちは「症状動画」を呼んでいます。次に、弊社が独自で作成した「問診表」に必要事項を入力していただきます。この「症状動画」と「問診表」の2点をセットにしてアプリ上で送っていただくと、それに対して獣医師が「疑われる症状」「受診を勧める診療科目」「緊急度」「家庭でのケア方法」という4つの観点で回答するというサービスです。「受診を勧める診療科目」とは、例えば「皮膚科」や「整形外科」のように症状に応じて受診を勧める診療科目を提示します。そして、飼い主さまのご自宅の近くに提示した診療科目を得意としている動物病院を探して5つ紹介します。月額1,580円で月2回まで、3回目以降は1回980円で相談することができます。また、12カ月継続でご利用いただくと、1,100を超える動物病院で受診可能な健康診断チケットをお贈りいたします。毎年の健康診断の結果はすべてデータベースに蓄積されるので、転居があった際にも検査結果を提示することが可能になりますし、診断結果を参考にしてPET’S ALL RIGHTのweb相談を受けることもできます。

「脱臼」から「癌」へ。愛犬の命を守るために本当に必要なことは適切な病院選択だった。

気になる症状があった場合、まずは動物病院に連れて行くことが一般的だと思うのですが、何故動画と問診表のみで診断するサービスを開発しようと思われたのですか。

ペットが最適な治療を受けるために、本当に必要なことは「病院選択」だと思ったからです。PET’S ALL RIGHTではペットの症状に合わせた「病院選択」を可能にしています。この「病院選択」が大切だという考えは私自身の経験から生まれたものであり、その経験はこのサービスを開発しようと思ったきっかけでもあります。実は2014年の12月頃に、私の愛犬が突如足を上げ始めたのです。もともと関節の弱い子だったので、しばらく様子を見ていたのですが、改善せず動物病院に連れて行き獣医師に診てもらったところ、そこでの診断結果は「脱臼」でした。しかし、その後引越しをして、別の動物病院連れて行ったところ、そこでの診断結果は「癌」だったのです。その時に「何故獣医師によって診断結果がこんなにも異なるのか」ということにすごく疑問を抱きました。よくよく調べてみると、実は2件目の動物病院の獣医師は腫瘍に関して大変勉強されている方だったのです。だから愛犬の症状を診て、癌の可能性があることを見つけてくれたのです。その先生に診てもらったおかげで、幸い私の愛犬は足を一本失うだけで済み、今でも元気に生きていますが、もしあの時脱臼だと思って放っておいたら、今頃全身に癌が転移して亡くなっていたと思います。そう考えた時に「そもそも何故ペットの体に異変が起こった時、症状に合わせて動物病院に行くのではなく、かかりつけの動物病院に連れて行くのだろうか」ということに気付いたんです。人間の場合、歯が痛い時はまずは歯医者に行きますよね?歯が痛いはずなのに皮膚科や耳鼻科に行く人はいないと思います。人間の病院に専門科目があるように、動物病院にもそれぞれ得意な診療科目があるはずだと思いました。

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「専門性の可視化」という業界の課題に挑む

どのように1万以上もある動物病院の専門性を調べて提示しているのですか、また現在どのくらいの動物病院の情報を提示できるのですか。

そこがなかなか難しいところなのです。なぜならホームページなど、インターネット上で専門性を掲げている動物病院はまだまだ少ないからです。というのも、元々獣医師法という法律により専門分野を表現することを禁止していたという背景もあり、動物病院が自院の専門性を掲げるということに対してあまり積極的ではないようでして、私は、それは業界の課題だと認識しています。現在は自社調査に基づき独自のデータベースを作成しており、既存のサービスの中ではかなり専門性に特化したものになってきていると思いますが、それでも国内の全動物病院のうち、3割ほどしか網羅できていません。今後は7~8割まで拡充させたいと思っています。もちろん「全部の科目を診療できる」というのも良い事だと思うのですが、その中でも特に「この科目が得意」というものを提示していただきたいです。私見ですが、一人の獣医師がすべての動物のあらゆる症状を完璧に診られるということは、難しいのではないかと思います。人間であれば、臓器の位置や構造が同じですが、動物の場合、狩猟犬と愛玩犬で臓器構造や体質が違いますし、ましてや犬と猫、猫とうさぎとなると種別が全く異なりますよね。「人間」という一つの種族ですらこれだけ細分化されていて、先生たちもそれぞれ専門の分野で活躍しているのに、獣医師が種別を超えた幅広い分野を一人で診ることは難しいと思っています。実際に、何人かの獣医師にヒアリングをしたところ、「やはり全てを診るのは難しい」という声も沢山耳にしました。

症状動画を見てアドバイスをする獣医師は何人いるのですか

現在14名います。犬や猫だけではなくフェレットやうさぎを診ることができる獣医師もいます。webを活用した獣医師相談サービスの中で、フェレットやうさぎを診療できるのはおそらく初めてだと思います。鳥を専門に診ている獣医師もおりますので、弊社のシステムが整い次第、鳥も対象になる予定です。参加している獣医師は、産休・育休を取得中の方や、やむを得ない理由で仕事をやめてしまった方、ご家庭で子どもとの時間を大切にしたいが獣医師としての仕事もしたいとお考えになる方など様々です。我々のサービスはそういった獣医師さんにも活躍の場を提供できていると思っています。

500件中たったの4件、通過率1%未満の難関を突破するまでの道のり

こちらのサービスは「Recruit Ventures」を通じて提案されたサービスとプレスリリースに記載されておりましたが、「Recruit Ventures」とは具体的にどのような制度なのですか?

「Recruit Ventures」とは、リクルートホールディングスが開催している新規事業開発プログラムのことです。各事業会社の全従業員がエントリー可能となっており、毎月審査会を行っています。以前は年に1回のエントリーだったのですが、新規事業を思いついた段階でエントリーできるよう、月1回の開催となりました。2015年度の実績で約500件のエントリーがあり、最終審査を通過したものはそのうち4件のみです。そのうちの1つがPET’S ALL RIGHTです。しかも、メンバーは私1人のみです。結構すごいことじゃないですか?(笑)。最終審査を通過すると、メディアテクノロジーラボという組織に出向になりまして、100%新規事業にコミットすることができます。また、事業化してから1年間は「実証実験期間」として事業を推進していき、1年後の審査を通過するとさらに予算が与えられます。ちなみに、メディアテクノロジーラボに出向するまでは『ゼクシィ』でクリエイティブのディレクターを3年ほどしていました。

開発に当たって苦労した点や受賞までに改善したところについて教えてください。

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開発までに苦労した点は「どのように症状に合わせた病院を選択するのか」というところです。実は、私は「Recruit Venture」に3回エントリーして、3回目でやっと最終審査を通過したのですが、それまでに大きく改善したところが「相談方法」なのです。始めはチャットを使用して獣医師にペットの症状を伝える方法を試みましたが、テキストだけですと、飼主が適切に症状を伝えることが難しく、ペットの状態が分かりませんでした。次に、テレビ電話を試みたのですが、背景を整えなければならないこと、そして何よりもテレビ電話中にペットの症状が顕れないことが問題でした。また、獣医師には家庭を持ってらっしゃる方もいますので、子どもがテレビ電話の中に映りこんでしまうこともあり、無理だと確信しました(笑)。そこで行きついたのが「動画を撮る」という行為です。自身で動物病院に行く時に、あらかじめ症状動画を撮って持っていくと、獣医師が「ありがとう!ペットの症状が良く分かる!」と仰っていました。診療台で触診をして「こういう症状があったんだね(今は元気そうだけど・・・)」と飼い主さまから伝聞で確認するよりも、1本の症状動画を見せた方が100倍も分かりやすいようですよ。

キラーワードは「あなたのかかりつけ医の専門性をご存じですか?」

サービス利用者の拡大に向けた課題はありますか

「症状動画を見せて診療してもらう」という私たちの考え方がまだ一般的ではないところです。やはり皆さん「かかりつけの医師に診てもらうことが一番」という考えや「動画だけで診断することなど不可能」という考えをお持ちのようです。ただ、「かかりつけ医の専門性をご存じですか?」と問うと、ほとんど皆さん「知りません」と言い、さらに「もしかかりつけ医の専門が泌尿器科だった場合、ペットが足を怪我した時に連れて行きますか?」と聞くと「連れて行きません。確かにそれと同じことをしていますね。」と答えます。このように、直接飼い主さまの方とお話する機会があれば、皆さん納得してくださるのですが、間接的に、その重要性を伝えていくことに苦労しています。

すべては動物の命を守るため。サービス開発により実現したい世界とは

最後になりますが、小早川様がこのサービスを通じてどのような世界を実現したいのでしょうか?

獣医師がご自身の専門性を生かして働ける環境と、飼い主さまがペットの症状に合わせて病院選択をすることができる世界を実現させたいです。先ほども申し上げた通り、1人の獣医師がすべての動物のあらゆる症状を診ることは出来ないと思っています。私は、獣医師がもっと自分の得意科目をオープンにし、得意科目と異なる場合は他の動物病院を紹介するといった環境になってほしいと思っています。もしかしたら、獣医師の中には、全て診療出来ないことを恥ずかしい・不名誉なことと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし私は、それは動物の命を守るための、むしろ格好良いことだと思っています。獣医師には「何が本当に大事なのか」「何のために獣医師をやっていて、獣医師の一番の仕事は何なのか」ということを考えていただきたい。そうすれば、おのずと命と守る選択をすることになるでしょう。そして、将来的には、我々のサービスが獣医師と獣医師を繋げる「ハブ」のような存在になりたいと思っています。動物病院の認知拡大や紹介の活性化を実現することにより、業界自体の更なる盛り上がりに貢献したいと思っています。飼い主さまへも、継続的な啓蒙活動を実施していくことを通して我々のサービスは、人とペットが正しく共存できる世界の実現に貢献できると信じています。

株式会社リクルートホールディングスの会社概要

法人名     :株式会社リクルートホールディングス

住所      :東京都中央区銀座7-3-5

設立年     :1963年

代表       :代表取締役社長 峰岸 真澄

主な事業内容  :グループの経営方針策定・経営管理

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